オグリキャップをもう一度

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深い衝撃 深い悲しみ

ディープインパクトが亡くなった。

 

自分は、ダート競馬が好きだし、ひねくれ者でもあるので、いかにも「エリートの英雄」な感じがするディープインパクトのことは、特別に好きというわけではなかった。

ただ、それでも様々なレースが思い出される。

この馬に三冠を持っていかれると感じた若駒ステークス

横山典弘騎手が完ぺきな騎乗をしたにもかかわらず力でねじ伏せた菊花賞

引退レースとなった有馬記念は、フジテレビの三宅アナの実況もラジオNIKKEIの小林アナの実況も含めて覚えている。

 

亡くなったことがトップニュースとして取り扱われる馬。競馬を知らない人でもその存在を知っていた馬。

それが、ディープインパクトだった。

 

競走成績だけでなく、種牡馬としても優秀だった。

日本で8年連続リーディング。世界のクラシックレースにも出走し、勝った産駒だっている。

産駒が種牡馬として供用されているのは、アメリカ、アイルランド、フランス、イタリア、南アフリカニュージーランド、オーストラリアに、トルコやチリまで。世界各地にディープインパクトの血は拡がっている。

 

馬主の人でも、いつかはディープ産駒を持ちたい、それでダービーを勝ちたいと思う人はいっぱいいたであろう。

 

世界中に影響を与えたスーパーホース。

こんなスーパーホースが亡くなってしまったことに、深い衝撃を受けている。深い悲しみにくれている。

 

それでも、競馬は続く。悲しんでばかりではいられない。

そして、ディープインパクトを超す馬を育てよう。

それこそが、ディープインパクトに対する最大の供養であるかもしれない。

 

お悔やみ申し上げます。

書くことあれこれ

お久しぶりです。

前回のブログから1か月以上が経ってしまいました。

その間、競馬界にはいろいろとありましたね。

前回のブログの続きでいうと、騎乗停止となったルメールかしわ記念を勝って、謝りながらインタビュー、そして休暇(結構楽しんでいたような)。ルメールの代役となったレーンはヴィクトリアマイルを勝つも、東京優駿では残念な結果に。

他にJRAでは、東京優駿が行われ、2歳の新馬も始まり、北海道シリーズも始まりと、夏競馬へと移ろう感じ。ただ、前代未聞の大規模となる禁止薬物混入事件などもあって、揺らいでいる気もします。

地方では、的場文男のいない東京ダービーが行われたり、柏木騎手の大怪我があったり…。

悲喜こもごも。それでも競馬は続きます。

 

個人的には、久しぶりに東京優駿を見に行きました。これは後でブログに載せましょうか。

もちろん、今年も東京ダービーにいっています。こちらもブログで感想を書きたいと思います。

 

ここで告知。

私(野田洋平)が武蔵小杉にあるコミュニティワインバー「こすぎのENGAWA」で6月22日(土)に競馬イベントを行うこととなりました。

kosugi-engawa.com

お酒などを飲みながら、みんなで翌日行われる宝塚記念など競馬のことを語りあいましょう、という企画です。

参加料等は特にかかりません(もちろん、飲食代はかかりますが)。

ご参加いただければ幸いです。

よろしくお願いします。

 

今回はこんなところで。

ダービー観戦記も書かないといけませんね。

 

審議だらけの一日

アメリカで歴史的な降着が起こった約5時間半後、日本でもG1レースで降着が起こった。それも、一番人気の馬で。

NHKマイルカップ。最後の直線、残り400m付近の地点で前が少し開いたところでグランアレグリアが横にいたダノンチェイサーを弾き飛ばして前に出ようとした。それ原因となって、グランアレグリア降着となった。

日本はアメリカとは異なる審議制度(カテゴリー1)であり、被害馬が加害馬より先着できたといえない限りは降着とならない。

確かにグランアレグリアとダノンチェイサーの差はクビ差。不利がなければ先着していたかもしれない。

しかし、残り400m付近での出来事。十分巻き返せる距離があるのではないか。

ましてやG1で勝負がかかっている地点。あれくらいのアタックはありうる範囲ではないか。

「あれで降着はかわいそう」

実際、騎手の間では乗っていたルメールを擁護する声もあるという。

 

個人的に今回の事案は、降着もあるかな、という感じである。

審議制度がカテゴリー1となってから降着になったのは13件。クビ差は降着があるケースだ。

今回、前が開いた瞬間を狙ってのアタックと見られてもしょうがない感じであり、「わざと」やった(あえてこう言う)とも思える。

ならば、故意にやったことも考慮して、クビ差なら降着にしてもいいだろう、という判断になったのだと思う。

 

ただ、今回の処分で問題となったのは、降着だけでない。ルメールが5月11日から16日間騎乗停止になったのである。

騎手が擁護しているように、今回は降着にならない可能性もあるギリギリのケースであり、過怠金ならともかく、16日間も騎乗停止になるのはおかしいのではないか。

16日間の騎乗停止となった理由の一つが、3月2日に不注意騎乗で騎乗停止となったのに、短期間で同様の騎乗をしたからだという。言ってみれば「再犯加重」だ。裁決レポートには出ていないが、皐月賞での騎乗も考慮されていたと思われる。

G1ともなれば、誰もが勝ちたいので、自然と厳しいレースとなる。ましてや上位人気となれば、「勝たなければいけない」プレッシャーから強引な騎乗をしてしまうこともある(皐月賞のサートゥルナーリアもNHKマイルカップのグランアレグリアも一番人気であった)。実際、積極的に勝とうとするルメールの騎乗を褒めていた人はいたと思う。

ただ、同時に安全で公平でなければ競馬はいけない。大きなレースならなおさらだ。

今回、JRA側は処分を重くすることでG1での相次ぐルメールの強引な騎乗に釘を刺したともいえよう。裁決処分の範囲内で。

 

今回の処分は直前にブラストワンピースの鞍上が池添からルメールに変更すると発表された等でルメール一極集中体制に対し文句が出てきたタイミングでのものだった。だから、なおさら話題となった部分はある。

ただ、ルメール一極集中体制と今回の重い処分は無関係だ(間接的にルメールに馬が集まることでルメールにプレッシャーがかかって強引な競馬をしがちになる、というのはあるにせよ)。

処分が重いと感じるかは、正直個人の価値観としか言いようがない。再犯加重ともいえる処分を認めるかは意見が分かれるところだろう。

だから審議の処分はいつも問題となる。

ひとつ望むのは、なるべく迅速で根拠をはっきりと示した処分をすること。審議の制度があるのは、安全かつ公平な競馬を行うためだから。ファンにその担保をするためにも。

 

さて、騎乗停止で東京優駿までも乗れなくなったルメール。その翌日にはかしわ記念があったのだが、その話は次回にでも。

名誉だからこそ難しい

「My Old Kentucky Home」を歌って出走馬を迎え、勝者にはバラのレイを贈り称える。あらゆるスポーツでもっとも偉大な2分間。ケンタッキーダービーというのは、世界の競馬の中でもっとも勝ちたいと思われるレースの一つだ。

だからこそ、そこでの勝利は何よりの名誉となる。

 

今年のケンタッキーダービーは歴史に残る波乱の決着となった。

もちろん、日本で発売された馬券で3連単が1600万円馬券となったというのもある。

ただ、それ以上に波乱だったのが、20分以上にわたる審議の末、1位入線馬が降着となり、2着入線馬が繰り上がって優勝したことである。これは、145回行われた長い歴史のあるケンタッキーダービーで初めてのことだった(ダンサーズイメージが薬物で1着から失格になったことはあるが)。

レースは降りしきる雨の下、泥の馬場で行われた。スタートよく逃げたマキシマムセキュリティ。そのまま汚れず先頭でゴール板を駆け抜けた。無敗の5連勝。新しいスターの誕生に観客は沸いた。

しかし、異議申し立てがあり、審議に。結果的にマキシマムセキュリティが3、4コーナー中間で外にふくれ、ロングレンジトディの進路が狭くなり大きく後退。その加害馬としてマキシマムセキュリティがロングレンジトディの次の着順(17着)に降着することとなった。

この裁決にアメリカ全体で賛否両論が巻き起こっている。

降着処分が決まった瞬間、チャーチルダウンズ競馬場で怒号交じりの悲鳴が起きる映像も見た。トランプ大統領Twitterで「ケンタッキーダービー降着はおかしい」旨のツイートまでしている。

日本では一番人気、アメリカでも二番人気だったマキシマムセキュリティの降着。それも、アメリカ競馬でもっとも強いとされる逃げ切りで、1馬身4分の3の差をつけての入線なのだ。3、4コーナーでの進路妨害がなくても勝っていたのはマキシマムセキュリティであるし、ケンタッキーダービーという名誉あるレースの勝者にふさわしいのは一番強い競馬をしたマキシマムセキュリティだ。

そう思うのもわかる。

ただ、ロングレンジトディの進路が狭くなったのも事実で、実際ロングレンジトディはこの不利により先頭集団から一気に後方まで下がってしまっている。

失格・降着制度について以前の日本のようなカテゴリー2を採用しているアメリカの競馬なら、降着処分もやむを得ないのではないか。そういう見方もできる。

失格・降着制度がなければ「やったもの勝ち」となってしまい、公平で安全な競馬が保障されない以上、制度として必要なのは当然だ。

同時に、判断するのは人間である以上、絶対的な基準は作りにくい。作っても評価、認定する際に結論が変わることもある。

ケンタッキーダービーという大レースだからこそ結果を重視すべきというのもわかるし、厳格に判断すべきというのも理解できる。

多分正解はないのだろう。

ケンタッキーダービーが名誉あるレースだからこそ、結論を出すのはより難しくなる。

ただ、どういう結論になっても、後味が悪くなってしまうのは同じだ。

だから、せめて勝者は称えよう。

今回ならカントリーハウスとプラ騎手と、モット師を。何しろモット師は数々の大レースを勝ち競馬殿堂入りをしながら、これがケンタッキーダービーの初制覇なのだから。

 

ケンタッキーダービー降着から5、6時間後、日本でも降着騒ぎが起こるが、それは次回のブログで。

変わるもの 変わらないもの

もうすぐ平成が終わろうとしている。

年号が変わる意味合いは昔ほどないのかもしれないし、何もかもが新しくなるわけではない。日常はつづく。それでも、ちょうど大型連休。この機会にひとつの時代を振り返るのもいいかもしれない。

時代によって、変わったことなども含めて。

 

JRAでいえば、平成最後のG1競走が終わった。

天皇賞(春)。平成でこのレースほど意味合いが変わった、ひいては最近の競馬が変わったと実感するレースはないだろう。

かつては「八大競走」の一つとして、古馬にとって最も名誉あるレースだった。

それが、スタミナよりスピードを求める競馬となり、ステイヤーは前より持て囃されなくなった。そのことにより、天皇賞(春)に出る馬も、頭数が減ってきた。

今回は13頭立て。G1を勝っていたのはフィエールマンのみという状況だった。

必ずしも天皇賞を勝つのが名誉というわけではない。より馬にとって適性があり、引退後の価値が上がるレースに出る。そういう流れになってきた。

 

そして、今回の天皇賞(春)の結果で、また時代は変わったということを実感する。これまで天皇賞(春)を勝てなかったディープインパクト産駒がワンツーフィニッシュを決めたのだから。

もともとディープインパクトの遺伝子は長距離型であるので、これまで勝てなかったのが不思議という見方はできる。とはいえ、ディープインパクト産駒のキレはクラシックディスタンスでこそのものであり、より長い距離だと鈍るものであった。

今回ディープインパクト産駒がワンツーを決めたのは中盤で一気にペースが落ちるラップであったからかもしれない。とはいえ、天皇賞(春)ディープインパクト産駒が勝ったのは事実だ。より競馬が瞬発力重視へと流れていくのは間違いないだろう。

もう一つは、勝ったフィエールマンも2着のグローリーヴェイズも1月以降レースを使わず天皇賞(春)に臨んだこと。これは、桜花賞の後にも書いたが、調教技術の発達により、レースに使わなくても負荷をかけられるようになったこと、休み明けでもレース感が鈍らず、フレッシュな状態で力が発揮できやすくなったことなどが理由としてあげられる。

レースレベルの向上で、1回競馬使うことによる負担は以前よりも増したと考えられる。ならば、レース間隔をあけたほうが疲れのないいい状態で出られる、というわけだ。

社台グループを中心に、この傾向はますます強くなるであろう。トライアルレースなどの重要性も変わってくるに違いない。

 

ただ、変わらないものもあった。

日本競馬の長距離界はメジロの血とともにあった。

古くはメジロアサマ。その産駒であるメジロティターン

平成になると、メジロティターンの子であるメジロマックイーンが長距離界の頂点に君臨した。

そして、今回の天皇賞(春)牝馬三冠馬メジロラモーヌの牝系からなるグローリーヴェイズが2着に入った。

よりスピードが求められる時代となっても、なお天皇賞(春)で好走するメジロの血。そこに、メジロの紡いできた血の思いが感じられる。

 

確かに、時代によって競馬のトレンドは変わっていく。

しかし、それでも変わらないものがある。

より強い馬をつくろうという人々の思いと、競走馬の親から子へ代々受け継がれていく血のロマン。無事に走ってくれという祈り。などなど。

平成が終わり、令和になる。

令和になっても、競馬の魅力は変わらず残る。そう信じて。

グランアレグリアの桜花賞制覇に思う今後の競馬界

JRA桜花賞はグランアレグリアが勝ちました。

自ら早めに先頭を捕まえに行って、そのまま離しての快勝。勝ち時計1分32秒7は桜花賞レコードと、実に見事な勝ちっぷりでした。

 

このグランアレグリアがデビューしたのが、2018年6月3日。JRA新馬戦が始まった週でした。そこでグランアレグリアは、府中の芝マイルを1分33秒6と、6月の2歳馬にとって破格の時計で勝ち上がったのです。

その時の2着馬が、ダノンファンタジー。ダノンファンタジーも、1番人気として桜花賞を迎え、2着馬とは差のない4着と、力があるところを見せました。

 

このように、新馬開幕週にデビューした馬が人気となり、そのまま上位に入ったのが今年の桜花賞でした。

そして、来年以降も春のクラシックは、開幕週デビューとまではいかないにしても、早期デビューの馬が上位に入るという流れになると思うんです。

思えば、牝馬三冠のアーモンドアイは8月の新潟デビュー。東京優駿ワグネリアンは7月の中京。クラシックは勝っていないものの、スプリングSを勝利し、その後マイルCSを勝ったステルヴィオ新馬戦開幕週の府中で勝ち上がった馬でした。

オグリキャップの時代に競馬を見始めて、ダビスタ等のゲームで育った自分としては「真の強い馬は10月くらいにデビューするものだろ」と思ってしまうのですが、明らかに時代は変わりつつあります。

その原因の一つが調教技術の進化にあるのは間違いありません。素質馬であっても、その後の成長を阻害せずに、早めに仕上げることができるようになった。なら、ほかの馬がまだ仕上げ切っていないうちに出そう。

その流れを促進しているのが、2歳重賞の増加です。早めにクラシックに出られるだけの賞金を稼げるチャンスが増えた。なら、早期デビューした方が楽ではないか。

そのように考える人が増えてきているような気がします。

 

そして、調教技術の進化と2歳戦重賞の増加が、もう一つのトレンドを生み出していくと考えられます。それが、今回のグランアレグリアのように、ステップレースを挟まず直接クラシック本番に出走する、というパターンです。

かつては一叩きして、というのが常識でした。

しかし、素質馬が揃う3歳のステップレースともなると、ダメージの多く残ることが考えられます。

そこで、2歳のうちにクラシックに出られるだけの賞金を稼いだのなら、間隔をあけてむしろフレッシュな状態で出した方が好成績を収めることができるのではないか。

少なくとも、天栄やしがらきのような優れた施設を持った社台グループなら、レースやトレセンで負荷をかけなくても、成長を促すようなトレーニングはできます。そして実際、グランアレグリアは勝ちました。

アーモンドアイも、2歳からではないものの、年明けすぐのシンザン記念からのローテーションと、間隔をあけてのものでした。

以上のことからも、少なくとも、社台グループは今後早期デビュー+使い分け等も含めて間隔をあけての調整というパターンでクラシックに望むと思われます。

ただ、同時に、ほかの育成場の技術も進化し、3歳の重賞では逆にメンバーが手薄なものも出てきたので、場合によっては社台グループ以外の方が好成績を収める、なんてことが増えるかもしれません。今年の弥生賞スプリングSニュージーランドトロフィーあたりはその例かもしれません。

 

ともあれ、今後の競馬界は、より早期デビューの流れになると思われます。

なら、晩成気味の馬はどうするのか。2歳の早い時期に番組の少ないダート馬はどうするのか。

何が競馬界のためになるか、その馬のためになるのか等、いろいろと考えながら、課題を解決できるようにしたいものです。

その高きスピリッツ ウオッカよ永遠に

さいころから父親にずっと言われてきたことがある。

「日本の競馬史上、一番強かった馬は、マーチスだ」。

最近の競馬ファンだと名前すら知らない人もいるかもしれない。31戦14勝。主な勝ち鞍は皐月賞。こう見ると、大したことがないかもしれない。

しかし、NHK杯を勝った時、父親は「(2着の)タケシバオーが止まって見えるほどの脚で差し切った」という。また、「マーチスはシンザンの再来」とまで言われたこともある。

そのマーチスを生産したのが、カントリー牧場だった。

 

カントリー牧場最後の意地。それを見せたのが、ウオッカだったと思っている。

そのウオッカが亡くなった。15歳。早すぎる死だ。

改めて成績を見てみる。着外も結構あり、決して完璧というわけではない。

しかし、衝撃という点では歴代でも屈指であろう。

64年ぶりの牝馬による東京優駿制覇。思えば、これが牝馬の時代の到来を高らかに告げるものだった。

ダイワスカーレットとの幾度の名勝負。特に、最後の対戦となった天皇賞(秋)での大接戦は競馬史上に残るレースとなった。

府中で見せる強さ。前が壁になって絶望的といえた安田記念。それでも差し切って勝つという、並外れたパフォーマンスも見せた。

半面、気難しいところを見せての敗戦も少なからずあった。そういった負けも含めて、ウオッカは競馬の素晴らしさ、難しさ、挑戦することの大切さ、諦めない精神などを教えてくれたと思う。

だからか、ウオッカには最近の競馬では少なくなったタフさというか、泥臭さを感じた。きっとそれが、レースを使って強くするカントリー牧場の意地だったと思う。

 

このカントリー牧場の意地は、ウオッカの繁殖にも表れていると思う。

そもそもウオッカの牝系は、小岩井牧場の基礎輸入牝場であり、日本の名牝系となっているフロリースカップ系。そこに、トウショウの血が入ったタニノシスターと、近年のカントリー牧場牡馬での最高傑作タニノギムレットをつけて生まれたのがウオッカだった。そこに、現在の日本競馬で主流となっているサンデーサイレンスの血は入っていない。ただ、日本の伝統の血であることは、確かだ。

そして、ウオッカの繁殖相手にもサンデーの血を取り入れていない。海外に出て、敢えて重い血を取り入れている。Sea The StarsやFrankelなどは、欧州では主流かもしれないが、日本では重くて思ったほど活躍馬を出していない(Frankelは出しているが)。日本の伝統的な牝系に、欧州のアーバンシーといった主流となっている牝系と融合させる。今すぐ結果が出るものではないが、今後日本の競馬がより世界と渡り合う時、このことが必要となるかもしれない。

日本でサンデー系と種付けして生まれた子供を見たかったという声もわかる。実際、サンデーの血が入っていないウオッカの産駒は、総じて大柄で、キレがあるのが少なく、重賞は勝っていない。

ただ、敢えてサンデー系をつけなかった決断が、この後サンデー系が飽和した日本競馬界で活きる。ウオッカの血が宝物となる。自分はそう信じている。

 

「(ウオッカを)割ったら弱くなるだろ」

そういって、ウオッカには冠名のタニノをつけなかった。

その名の通り、ウオッカは強く、人を酔わせる馬となった。

ウオッカの高いスピリッツは受け継がれるだろう。競馬に情熱がある限り。

 

お悔やみを申し上げます。