オグリキャップをもう一度

競馬好きの行政書士が競馬について気ままに書くブログ 馬主申請の代行も行っております

Into Mischiefの時代とケンタッキーダービーの呪い

4が月の延期となったが、今年も「The Most Exciting Two Minutes in Sports」であるケンタッキーダービーが無事開催された。

勝ったのはAuthentic。

父Into Mischiefは、昨年初めて北米の種牡馬で年間200勝を超え、リーディングサイヤーとなった種牡馬(ほかに年間200勝以上を達成した種牡馬は、すべて日本で供用されているもの)。記念すべき200勝を達成したときに勝利したのが、Authenticだった。

今回のケンタッキーダービー制覇で、Authenticはまた新たな勲章を父Into Mischiefにもたらしたことになる。

 

Into Mischiefは今年も北米リーディングサイヤーで首位。混戦となりやすい北米種牡馬戦線でこれだけの成績を上げることができたのは、血統背景にある。

妹に2歳から4年連続でアメリ牝馬チャンピオンに輝いたBeholder、弟にUAEダービーを勝ったMendelssohnがいる良血。遡ればアイルハヴアナザーなども輩出している、活力のある牝系だ。

Into Mischief自身が6戦しか走っておらず、消耗しきっていなかったのも、産駒に能力を伝える要因になっているかもしれない。

種付け頭数は200を超え、成績のアベレージもよい。今後も期待が持てる。

今回Authenticがケンタッキーダービーを勝ったことで、Into Mischiefの時代を確定させたといってよいだろう。

 

もう少しAuthenticの血統を見てみよう。

Authenticの祖母Oyster Babyは父父Icecapadeと母父In Realityの組み合わせで成り立っている。このIcecapadeとIn Realityの間にはErinとWenoという名牝によるニアリークロスが成立する。このニアリークロスはスピードとパワーを供給することが多く、アメリカだけでなく、日本でも成功している(クロフネ×フジキセキのニックス等)。

Into MischiefもIn Realityの血を有しており、ケンタッキーダービーの直線で一度並ばれてから再度離した二枚腰はIn Reality→Wild Againの血でよく見るものと考えると、In RealityのクロスでIcecapadeとのニックスが活性化し、いい効果を与えていると思われる。

 

圧倒的一番人気だったTiz the Lawは競り負けての2着。4コーナーで並びかけて直線に入ったときは、多くの人が勝ったと思ったことであろう。

だけど、勝てなかった。

17番枠はケンタッキーダービー146回の歴史で一度も勝っていない呪いの枠。そして、北米リーディングサイヤーにもなった偉大な種牡馬Tapitの系統は一度もケンタッキーダービーを勝っていない。

そんな「呪い」に負けたのかもしれない。

 

Authenticにバラのレイが授けられ、祭典は終了した。例年ならプリークネスSベルモントSと三冠ロードは続くが、今年はコロナの影響でケンタッキーダービープリークネスSが延期、先にベルモントSが行われるということとなってしまった。

この先待っているのは、プリークネスS、そして、2か月後のブリーダーズカップとなる。

AuthenticやTiz the Lawがこの先どんな走りを見せるか。

楽しみは尽きない。

アロゲートのこと

アロゲートが亡くなった。

深夜、そのようなツイートを見た時、目を疑った。

まだ7歳。産駒もデビューしていない。これからだというのに。

 

プリークネスS勝ち馬エグザジェレイターケンタッキーダービー3着馬ガンランナーなどを相手に、トラックレコードで圧勝したトラヴァーズS

歴史的名勝負。当時世界最強だったカリフォルニアクロームとの叩き合いを制したBCクラシック

記念すべき第1回王者となったペガサスWC。

スタートでの不利もなんのその。終わってみたらひと捲りで楽勝だったドバイWC

このG1を4連勝したときのパフォーマンスは、間違いなく「史上最強馬」と呼んでもおかしくないほどのものだった。

 

ファピアノアンブライドルドアンブライドルズソングと続くサイアーラインは、絶好調期おそろしいほどの爆発力を発揮する。そもそもの基礎スピードが高いうえに、もう一段階ものすごい加速をする。

上記4戦。最後の100mでさらに加速できるのは、アンブライドルズソングの仔だからともいえる。

ただ、同時にこのサイアーラインは、一度闘志が萎むとあっけなく負け、その後なかなか不振を脱することができないということがある。

ドバイWC以降のアロゲートはまさしくそんな感じであった。

爆発するとものすごいだけに、火種がなくなったら再び爆発させるのが難しいということなのだろう。

良くも悪くもサイアーラインの特徴を受け継いだ。アロゲートはそんな馬だった。

 

アンブライドルズソングの血は、アメリカだけでなく、日本などでも重宝されている。

日本でいえば、今年の3歳。JRAで無敗の2冠を達成したコントレイルは母の父がアンブライドルズソングだった。その他、ディープインパクト産駒で母方にアンブライドルズソングを持った3歳馬は、コントレイルも含めて7頭。うち3頭が重賞勝ち馬というハイアベレージぶりを示している。

サイアーラインの特徴を継ぎ、最高級のパフォーマンスを見せたアロゲートのことだ。おそらく種牡馬としても成功したのではないか。

 

あらためて歴史的名勝負となったBCクラシックを見てみる。

確かに、カリフォルニアクロームの仕掛けはちょっと早かったのかもしれない。

でも、後続を最後まで突き放していた。ついてこられたのはアロゲートだけだった。

決してばてたわけではないカリフォルニアクロームを最後にかわせたのは、アロゲートが史上最強馬レベルの強さであったからでしかない。

それは同時に、カリフォルニアクロームも史上最強馬レベルの強さにあったことにほかならない。

カリフォルニアクロームはいま日本で種牡馬として供用されている。アロゲートの分まで、というのは変かもしれないが、カリフォルニアクロームにも頑張ってほしい。

 

あまりにも早すぎるアロゲートの死。ただ残念である。

アロゲートの強さが語り継がれ、少しでもその血がつながるのを願うばかりである。

お悔やみを申し上げます。

今の府中の芝に向いている血統って

NHKマイルカップはラウダシオンが制しました。道中逃げるレシステンシアの外2につけ、直線で交わしての勝利。ミルコの戦術も見事はまっての勝利だったと思います。

 

前傾ラップで逃げて粘り切れるレシステンシアからすれば、前半34秒1で後半34秒5(レシステンシア自身は34秒7)と、前後半の差が0秒4程度の逃げは、馬場も考えるとそこまで早いペースではなかったと思います。

レシステンシアならもっと早いペースで逃げて後ろの脚を使わせることもできたのではないでしょうか。結果論ですが、ルメールが大事に乗ったがために、最後に競り負けたともいえます。そこら辺は、中間軽めだったことや、ルメールテン乗りだったことなども影響しているでしょうけど。

それでも2着だったのだから、レシステンシアもやはり強い馬だと思います。

 

結局は、高速馬場で多少距離が長いと思える馬でも残ってしまうのが今の府中。アメリカ競馬のような前に行けて持続力のあるスピードを持った馬がスピードに任せて粘り切ってしまうことが多いです。すなわち、DanzigやEight Thirty、Storm CatDeputy Ministerに、もはや定番ともいえるMr. Prospectorなど。

ラウダシオンの父リアルインパクトは、アメリカスピード血脈が豊富で、インディチャンプやアウィルアウェイのようなスピード馬を今も出し続けるトキオリアリティーが牝系。母アンティフォナUnbridled' SongやStorm Catなどのアメリカスピード血統を持ち、どんな種牡馬が相手でもそれなりに走れる子を出す優秀な繁殖牝馬。その配合から、高速馬場となった府中の芝マイル戦で勝つ馬が現れるのは、 必然的です。

また、レシステンシアについては以前も書きましたが、Danzig持ち。ダイワメジャー産駒がNHKマイルカップで好走するのも、ダイワメジャーの牝系がアメリカの快速血統であるYour Hostessであるからともいえます。 

 

この傾向は、今後も変わらないでしょう。

昨年のオークスでもダービーでもディープ×Storm Catの馬が連対したように、今年もアメリカ競馬のスピードを持った馬がクラシックで好走するでしょう。

4月29日の羽田盃とメモリアル

4月29日は暑い。あの年もそうだった。

23年前の4月29日、羽田盃が行われた日。あの日感じた暑さと熱気はよく覚えている。

 

長袖では汗ばむ陽気で、大井競馬場にいた私は、トゥインクルの時間となっても4月とは思えない暑さに汗をかいてうなだれていた。

メインレースの羽田盃パドックに陣取って出走馬を眺めていたら、一頭の馬が発するオーラというのか、熱気というのか、そのようなものに圧倒された。

発していた馬の名は、キャニオンロマン。4戦4勝、前哨戦の黒潮盃も勝って、一番人気に支持されていた馬だった。

レースは人気に応えてキャニオンロマンが3馬身差をつけての圧勝。パドックで感じたオーラは間違いなかった。

こう書くと、スピリチュアルだの胡散臭いだの言われそうだが、実際感じたのだからしょうがない。そして、馬からオーラを感じたのは、この羽田盃1回のみである。だから自分は「史上最強馬は何ですか」という問いに「キャニオンロマンです」と答えている。

 

その後キャニオンロマンは怪我をしてしまい、クラシック戦線を棒に振る。復帰するのは約1年半後まで待たなくてはいけなかった。

成長期に長い休みを挟まなければいけなかったこともあって、その後のキャニオンロマンは「史上最強馬」というほど強い走りを見せることはなかった。それでも重賞を勝ち、12歳まで一線級で走り続けたのは、ある意味「史上最強馬」なのかもしれない。

 

今日の8レース、羽田盃メモリアルとして「キャニオンロマン賞」が行われる。多くの人がキャニオンロマンに文字通り「ロマン」を見たからだろう。

今日は4月29日。23年前ほどではないかもしれないが、やはり暑い。そして、4月29日に羽田盃が行われるのは、キャニオンロマンが勝った時以来23年ぶりだ。

ロマンを、熱気を。無観客競馬であっても人を熱くさせる、いい羽田盃を見せてもらいたい。

プリンセスは素敵な母へと

最近、南関東所縁の血統の馬が活躍しています。

JRAから南関東へ転入し、報知グランプリカップ交流重賞でもあるマリーンカップを勝ったサルサディオーネの母は、的場文男騎手などを乗せて活躍したサルサクイーン。クラシックトライアル、京浜盃と連勝し、南関東クラシックの主役に躍り出たブラヴールの母は、石崎隆之騎手を背に南関東牝馬三冠を達成したチャームアスリープ桜花賞を勝ったアクアリーブルは、南関東牝馬二冠馬アスカリーブル唯一の産駒。そして、昨日佐賀スプリングカップを勝ち、8歳にして再び連勝街道をひた走るキングプライドは、南関東、佐賀・荒尾で活躍したアイディアルクインの仔。

母馬の活躍を見てきた自分としては、うれしさとともに、懐かしさもこみ上げます。

今あがった母馬には、共通点があります。それは、東京プリンセス賞で連対したこと。

明日は、その東京プリンセス賞

母アスカリーブルが出られなかった桜花賞を勝ち、親子合わせて牝馬三冠を達成したアクアリーブルが、母娘制覇を果たすか。それとも、2歳女王レイチェルウーズが桜花賞の雪辱を果たすか。その他にも魅力的な馬がたくさん出走します。

勝利して、プリンセスの座につくのはどの馬か。楽しみです。

そして、今回走った馬が、その後も活躍し、無事に繁殖に上がり、その仔も活躍してくれたら、と願います。

血統でみた皐月賞

土曜日は大雨。泥んこ馬場で、芝は前にいなければ勝てないような状態でした。

明けて晴れの日曜日。路盤改修によって排水がかなり良くなった中山競馬場皐月賞が始まるまでに稍重まで回復しました。

路盤改修以降の皐月賞は、基本的に2分を切るスピード決着なのですが、稍重のときは2分以上かかるタフな決着になっていました。そして、その時勝ったのがステイゴールド系のエポカドーロ(父オルフェーヴル)。路盤改修前とはいえ稍重のときステイゴールド産駒のゴールドシップが勝ったように、小回り中山でタフな馬場になると、機動力と持続力に自信のあるステイゴールド系が強い、というのがありました。

なら今年は唯一のステイゴールド系ヴェルトライゼンデに注目してみたのですが、機動力の良さを活かせず。

結果的に力勝負となった印象を受けました。

 

勝ったのはコントレイル。直線でサリオスとの「無敗のG1馬」対決を制してのもの。正直、自分の想像を上回る強さでした。

ディープインパクト×母父Unbridled's Songは相性のいい組み合わせ。これまでもダノンプラチナなど活躍馬を輩出しているうえに、今年の3歳馬でいえば5頭中4頭が新馬勝ち、2頭が重賞ウイナーという好打率。ポイントはディープインパクトのキレの源であるSir IverとUnbridled's Songのスピードとパワーの源となっているCequillo、Incantationのニアリークロス(Princequillo、mahmoud、Man o' War、Sir gallahad=Margueritate Valois=Bull Dogが共通)にあると思っています。特に、Bull Dogの血が入っていることで、北米的なスピードの持続力を豊富に得ているのだと思われます。

結果的にディープインパクト産駒の欠点である非力さと、Unbridled's Songにやや欠けている俊敏さが補える関係になって、うまくいっている。実際、コントレイルの馬体は筋肉質だけど、ディープらしい俊敏さもありますから。

ただ、切れるし伸びるけど、やや淡白で競り合いに弱い懸念がありました。

それが、サリオスとのたたき合いを制するのだから、想像以上としか言いようがありません。

しかも、外を捲ってのもの。馬場が回復したとはいえ、やはりタフなコンディション。長く脚を使って追い上げたら最後は失速してもよさそうなのに、まったくそんな素振りはありませんでした。

間違いなく東京優駿でも有力馬の筆頭になるでしょう。不安があるとすれば2400mの距離ですかね。ただ。例年のような高速馬場なら持つと思われます。

無敗の二冠馬達成の可能性は高そうです。

 

2着だったサリオスは慎重に上手にレースを進めたと思います。

4角で先頭に並び、やってきたコントレイルと併せて粘り切る。馬場がいいところを走らせることもあって、併せに行った判断自体は間違いではないと思います。しかし、コントレイルが想像以上に強かった。

この馬自身はハーツクライ産駒ですが、どちらかといえば母サロミナの影響が大きい気がします。馬体が大きい割には器用で、ハーツクライのような緩さがない。持続的に伸びる脚はハーツクライ産駒にもありますが、その質がドイツ的な固い感じを受けます。

そういう意味では、結果論ですが、もっと早くに抜け出したほうが良かったと思います。

東京優駿でも有力視されると思いますが、ハーツクライ産駒とはいえ、遺伝子的には短距離型らしいので、そこがどうなるか。むしろ、NHKマイルカップの方がいい結果が出る可能性もあります。

 

父エピファネイア×母父キングカメハメハはニックスなんでしょうね

「stay home」で密を避けながら過ごさないといけない今日この頃。いかがお過ごしでしょうか。

新型コロナウイルス禍の世界ですが、世の中の産業を止めてはいけないため、競馬は続きます。お家で競馬。テレビとネットがあれば、全国の競馬が見られる時代です。そんなわけで、私は暇な時間競馬を見ている生活をしております。これも仕事ですから(言い訳)。

 

雨の中で行われたJRA桜花賞。雨を切り裂いて差し切り勝ちを収めたのはデアリングタクトでした。

デビューから3連勝での桜花賞制覇。新星の誕生に競馬界は沸きました。

そのデアリングタクトの血統は、タイトルにあるように「父エピファネイア×母父キングカメハメハ」というもの。この組み合わせは他にもスカイグルーヴ(京成杯2着)やイズジョーノキセキ(忘れな草賞2着)、ヒバリ(オープン級)等がいるうえ、デビューした11頭中勝ったのが7頭。気づいている人もいるでしょうけど、ニックスと言っていいでしょう。

特徴的なのが牝馬が活躍しているということ。デアリングタクトもそうですし、前述のスカイグルーヴもイズジョーノキセキもヒバリも牝馬です。牝馬に限るとデビュー7頭のうち勝ちあがったのは6頭。しかも、桜花賞馬を含むという。これは驚異的なことだと思います。

 

もとからエピファネイアキングカメハメハはニックスではないかと言われていました。そもそもエピファネイアの母シーザリオキングカメハメハ系の相性はいいですから。その理由はSadler's WellsとNureyevのニアリークロスやマルゼンスキートライマイベストのニアリークロスなどによるものだというのはよく言われていることです。

ただ、こうも牝馬に偏っているのはどういうことでしょうか。特に、牝馬の活躍馬が出にくいと言われていたRoberto系のエピファネイアでそのような結果が出ているのは注目に値することだと思います。

理由の一つは、牝馬の方が仕上がりが早く、身体の緩さをしなやかさに転化できる、ということだと思います。おそらくエピファネイアは使われて良くなっていくタイプの種牡馬。しかも、緩さが出やすいキンカメの血が加わるとなると、3歳の春という時期だとまだ身体が出来上がっていない馬もいる。だけど、牝馬ならその欠点は出にくい。

もう一つは、シーザリオという牝馬の血を活性化させるからだと思われます。エピファネイア以外にもリオンディーズやサートゥルナーリアの母としても有名なシーザリオ。自身も日米芝のオークスを勝つ名牝でもありました。エピファネイアにしろリオンディーズにしろサートゥルナーリアにしろ、いかにもシーザリオの血を受け継いでいるという気性をしていました。その血が牝馬の活躍を導いているのではないでしょうか。

 

なお、加えてサンデーサイレンスの4×3クロスの有効性も指摘されてはいます。ただ、デビューした母父キンカメ牝馬7頭のうちサンデーの4×3クロスを持っている馬は6頭と、殆ど。活躍しているイズジョーノキセキはサンデーのクロスを持っていないのだから、必須ではないと思っています。まあ、あってマイナスではないと思いますが。

むしろ気になるのは、デアリングタクトとイズジョーノキセキがDanzig持ちだということ。早い時期からしっかりとしたスピードを持たせるのに有効なのかもしれません。そもそも現在の世界的Northern Dancer系の流行はSadler's WellsとDanzigによるものですから、その2頭を経由してのNorthern Dancerのクロスは互いの良さを引き出すのかもしれませんね。

 

まあ、ある程度エピファネイアキングカメハメハのニックスは予想できたいたので、昨年の今頃は「レッドブロンクス(父エピファネイア母父キングカメハメハの牡馬)が活躍する」なんて言っていたんですけどね。総論成功各論失敗の典型例です。

それでも、唯一父エピファネイア×母父キングカメハメハの牡馬で勝っているのだから、いい方か。