オグリキャップをもう一度

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職業倫理

今週、JRAの調教助手が動画投稿サイトで競馬予想を載せる行為をしていたということで、処分が下されました。
また先週は、佐賀競馬でですが、岩永千明騎手が通信機器を持ちこんで騎乗停止になりました。

確かに、スマホを持っているのが当たり前な時代では、通信機器の持ちこみ=情報を流すではないかもしれません。また、調教助手が予想を載せたからって、その予想が当たる、あるいは、わざと負けさせて消し馬情報にするということはないかもしれません。
しかし、一般的に見てどうでしょうか。裏情報を流す、八百長をする可能性は否定できません。
そもそも競馬は本来なら刑事罰となりうる賭博行為です。それを国や地方自治体が法をもって特別に認めているのです。だから、何より法により開催できていることを重視し、公正でなくてはいけません。関係者の予想行為禁止や騎手の調整ルームへの通信機器の持ち込み禁止は、公正という趣旨のためにあるのです。
その趣旨から考えれば、「可能性」が少しでもある以上、禁止を徹底しないといけません。
携帯電話は現代社会で必須の連絡ツールだとか、より情報発信をするために動画を始めましたとか、事情はあるかもしれません。それでも、競馬が法によって認められた賭博である以上、国民が公正さに対して疑念を抱かせるような行為は慎まなければなりません。
当たり前ですが、通信機器を一切持つことができないわけではないですし、予想行為以外ならSNS等で情報発信をすることはできます。その点では、禁止態様としてもそこまで厳しくないでしょう。

結局、職業によっては、その職に相応しい倫理があるのです。
競馬界はなおさら厳しく律しなくてはいけません。
とは言っても、なぜその禁止規定があるか理解できていないと、ついうっかりということもあり得ます。
なので、大切なのは、競馬界にとって重要な目的のためにあるということ、それをしっかりと伝えることなのかもしれません。
法律家として、そして、競馬を愛するものとして、公正な競馬のお役に立てることができたら、と思っております。
そして、自分も倫理を大切にしないといけないなと実感しました。

スーパーカーの源は今なお健在 ~Quillについて~

昨日ブログで書いたランディスシティ。4代前の母がザベリワンだということについても、昨日触れた。
改めてザベリワンの血統を見てみると、父がOne for Allだったということに気づく。
現在南関東に、父ディープインパクト×母ラヴェリータのワンフォーオールという馬がいるが、もちろん同名の別馬。ザベリワンの父であるOne for Allは父Northern Dancer×母Quillという血統でカナディアンインターナショナルなどを勝った馬である。
Northern Dancerについては今更説明する必要はないであろう。
今回書きたいのは、母Quillの方である。
日本でQuillが知られるとしたら、次の事実によってであろう。マルゼンスキーの祖母であるということだ。
橋本聖子さんの父橋本善吉氏がQuillの娘シルを日本に輸入し、輸入時シルのお腹の中にいたのがマルゼンスキー。様々な逸話を残し、そのスピードから「スーパーカー」と言われた名馬である。今ではウマ娘にも登場し、若い競馬ファンにもお馴染みとなった。
マルゼンスキーのスピードは父Nijinskyによる部分もあるが、母方からも影響を受けているといえるだろう。祖母Quill自身がエイコーンSなどアメリカの主要レースを勝ち、最優秀2歳牝馬にも選ばれるほどの牝馬であったのだから。
そんなQuillに名種牡馬Buckpasserを付けて生まれたのがシル。当時の日本ではお目にかかれないほどの良血だったと言える。
シルの仔はマルゼンスキー以外思ったほど走らなかったが、それは橋本善吉氏が「何を付けても走るだろうと勘違いしてしまった」ことが理由と言われている。それでも25歳というかなりの高齢になるまで繁殖生活を続け、マルゼンスキーが亡くなった際にその葬式にシルが参列しているのだから、やはり生命力はあったのだろう。

Quillについて書きたくなったのは、もう一つ理由があってのこと。
昨日行われた白山大賞典。馬場を味方につけてメイショウカズサが逃げ切った。そのメイショウカズサがQuill→シルと続く牝系出身なのだ。
先ほど「思ったほど走らなかった」と書いたが、シルから続く血は今なお受け継がれている。それも、重賞を勝てるくらいに。
改めて思う。マルゼンスキーという馬を構成する血の凄さを。
そして、その血がこれからも受け継がれることを願うばかりである。

走れ東京シティ競馬を 走れ世界へ

2着馬に4秒1差をつけての圧勝。それも、持ったままだった。
噂通り、いや、着差を見れば噂以上の勝ち方だった。
その馬の名は、ランディスシティ。育成段階では先日大井で行われた2歳重賞ゴールドジュニアでこの時期の2歳馬ではお目にかかれない時計で勝ったママママカロニ以上に動いていたというのだから、そのすごさが分かる。

久しぶりに大井競馬場に現れた怪物候補は、海の向こうアメリカからやってきた。
外国産馬限定で南関東競馬向けに共有馬主を募集しているトラヴァーズサラブレッドクラブの一期生。
父はBCスプリント覇者のRunhappyに母の父Speightstownという文字からも、どれだけパワフルなスピードを持っているのか楽しみになる。
それだけではない。4代前の母に「The Very One」という名がある。第1回ジャパンカップに「100万ドルホース」としてアメリカから来日し、一番人気となったザベリワンのことだ。ジャパンカップでは3着だったが、世界的に有名だった牝馬の参戦は、当時まだ世界へ挑戦することが少なかった日本の競馬界に世界一流の馬が纏っているオーラを伝えてくれた。
そんなザベリワンの血を持った馬が、大井競馬で走る。しかも、大きな舞台での活躍を予感させる走りを見せて。
アメリカ競馬と日本の競馬の懸け橋となったザベリワンの血が、今度は日本からアメリカ競馬へ挑戦する懸け橋となる。
ランディスシティ。そして、ランディスワールド。
ケンタッキーダービーのゲートにランディスシティが収まる。チャーチルダウンズの馬場を駆け抜ける。
そんな夢を見てみたくなった。

競馬界先週(8月30日~9月5日)の出来事と今週(9月6日~9月12日)の予定

【先週の出来事】

  • 8月31日(火)、川崎競馬場で行われたスパーキングサマーカップサルサディオーネが逃げ切り勝ち。
    このことはブログにも書きました。

  • 8月31日、JRA二冠馬ドゥラメンテが繁用されていた社台スタリオンステーションで亡くなりました。
    9歳という短すぎる生涯。
    お悔やみ申し上げます。

  • 9月1日(水)、門別競馬場で行われたびらとりオープンでトウキョウドライヴが勝利。
    管理している角川調教師が「スーパーステションを彷彿とさせる」というくらいの能力の持ち主。
    今後の活躍がさらに期待されます。
  • 9月1日、佐賀競馬場で行われたサマーチャンピオンでラプタスが勝利。
    JRAの騎手にコロナ感染者が出たことによる特別措置で、急遽佐賀競馬鮫島克也騎手が騎乗しましたが、代打であることを微塵も感じさせない見事な騎乗ぶりでした。さすがキングシャークです。
    ラプタスの最大目標は金沢で行われるJBCスプリントになりそうですが、出走するためにはもう少し賞金を積まないと厳しいところ。今後のローテが気になります。
  • 9月4日(土)、札幌競馬場で行われた札幌2歳ステークスはジオグリフが捲っての圧勝。
    種牡馬ドレフォンはこれがJRAで初の重賞勝利となりました。
    早期デビューも可能で、芝でもダートでも走る仔を出すドレフォン。この勝利でさらに馬産地での人気が高まりそうです。
  • 9月4日、ホッカイドウ競馬の林和弘調教師が亡くなりました。
    今年、父親が所有するラッキードリームで道営クラシック三冠を達成したばかり。
    名伯楽の早すぎる死は、個人的に衝撃的でした。
    お悔やみ申し上げます。
  • 9月5日(日)、小倉競馬場で行われた小倉2歳ステークスはナムラクレアが勝利。フェニックス賞に続いての連勝を飾りました。
    ナムラクレアは新馬戦、未勝利戦を勝っていませんが(平場のレースも勝っていない)、オープンと重賞を勝つという珍記録を達成。
    また、2着にスリーパーダが入り、ミッキーアイル産駒のワンツー決着。小倉2歳ステークスは昨年もミッキーアイル産駒のメイケイエールが勝ちましたし、ミッキーアイル産駒が好走しますね。
  • 9月5日、新潟競馬場で行われた新潟記念マイネルファンロンが勝利。先行してレースを進めることが多かった同馬を、今回初騎乗だったミルコ・デムーロ騎手が後方からレースを運ばせ差し切るというファインプレーな騎乗を披露。
    マイネルファンロンは今年のオークスデムーロ騎手を乗せて勝ったユーバーレーベンの兄。
    デムーロ騎手にとっても陣営にとっても嬉しい勝利だったのではないでしょうか。

 

【今週の予定】

  • 南関東競馬は大井開催。夏のスプリント王決定戦・アフター5スター賞と、伝統と格式のある一戦・東京記念が行われます。特に東京記念は前回の東京オリンピックを記念してつくられた競走。オリンピックがあった今年は、特に注目したいです。
    また、今開催の大井競馬は、トゥインクル35年ということで、レース名にトゥインクルレースを始めてからの出来事を付けています。これを機会に、トゥインクルレースの思い出などを語り合うのもいかがでしょうか。
  • 門別競馬では9月9日(木)に旭岳賞が行われます。
    クインズサターン、リンノレジェンド、リコーワルサーなど楽しみなメンバーが揃いました。
    特に、リンノレジェンドにとっては、以前管理していた林和師の弔い合戦にもなります。
    いい勝負を期待したいです。
  • 佐賀競馬では9月12日(日)にロータスクラウンが行われます。
    3歳馬による高知競馬との交流重賞
    互いの競馬場の意地をかけた熱い戦いに期待したいです。
  • JRAは今週から中山と中京の2場開催に。重賞は11日(土)に中山競馬場紫苑ステークスが、12日に中京競馬場セントウルステークス中山競馬場京成杯オータムハンデが行われます。
    この時期の中山は、開催があくうえ、夏を越すので、非常に馬場の状態が良くなります。また、エアレーションを施しており、クッション性も高くなります。そのため、芝は走りやすく、前も止まらないけど後ろも伸びるという馬場になります。
    基本は先行馬ですけど、意外と差し馬も台頭するのがこの開催です。
    狙いはとにかくスピードがある馬。血統的にはロードカナロア産駒です。
    対し、中京競馬場は今年かなり使われてきており、どこまで馬場が回復しているか見てみたいところ。そもそも本来なら阪神競馬場で開催される番組なので、例年よりもデータではなく当日の馬場等を見て判断した方がよさそうです。
  • 紫苑ステークスは、重賞になったことにより、以前より秋華賞へ直結しやすいレースとなりました。
    今年は牝馬クラシックの有力馬が独特な使われ方をしているので読みにくい一面もありますが、紫苑ステークスにも桜花賞3着のファインルージュやオークス3着のハギノピリナ、フラワーカップ勝ち馬ホウオウイクセルなど実績馬が登録しています。
  • セントウルステークスは、スプリンターズステークスへの最重要トライアルレース。
    今年は中京競馬場で行われるので、高松宮記念との親和性が高そう。
    注目は何と言ってもレシステンシアでしょう。
  • 京成杯オータムハンデは、前述したように馬場がいい状態で行われるので、スピード決着になりやすいです。
    ある程度前に来たい馬もいるので、今年は展開面もカギになりそう。

あまりにも短い、荒々しい馬生

キングカメハメハ×エアグルーヴプラスサンデーサイレンスの完成形。ドゥラメンテの馬体を表現すると、そうなるかと思います。
硬くて柔らかい。張りがある筋肉をまとっていながら、可動域が広く、柔軟性に富んでいる。そんな馬体。
その硬さと柔らかさは、同時に、馬体の緩さや怪我のしやすさにもつながっていたのかもしれません。
「まだ完成していない」
現役時、驚くようなパフォーマンスを見せながら、幾度も言われた言葉が、何よりの証拠だと思っています。
無事に完成したならば、どれだけ強い馬になっていたのだろう。そう思わせるには十分な馬でした。

完成形でありながら、完成していない。名器といわれるものが扱いにくいのと同様、ドゥラメンテ自身もおそろしいまでの才能を秘めているからこそ、扱いには慎重にならざるを得ない馬でした。
ドゥラメンテの特徴ともなったクロス鼻革。驚異のレースといわれた皐月賞。あふれる才能をコントロールできないくらいの馬でもありました。
まさに、ドゥラメンテ(荒々しい)という名にふさわしい馬だったと思います。

種牡馬としても、新種牡馬リーディングに、現時点で今年の2歳馬のリーディング。数字を見れば、さすがの成績を残しています。
なのに、どこか物足りなさを感じてしまう。ドゥラメンテであるが故に、ハードルを高く設定してしまうからでしょう。
正直なところ、ドゥラメンテは完成形であるが故に、超える馬を考えるのが難しい側面があります。最近の日本で生産された馬との配合では、血統的に逃げ場がない。良くも悪くもドゥラメンテの能力は伝えるけど、劣化コピーされたのが生まれてしまう感じでしょうか。
逃げ場がありそうな海外繁殖との配合だと、散漫というか、硬すぎるとか重すぎるとか柔らかすぎるとか、極端な形になる可能性が高くて、ギャンブルとなってしまう。
それでも好成績を残しているのは、ドゥラメンテの能力がもともと高いからなのでしょう。
だからこそ、ドゥラメンテを超えるような馬が出てくる場合、どんな血統から誕生するのか、楽しみでもありました。

それだけに、まだ2世代しか走っていない中での死は、あまりにも早すぎます。
最近の日本競馬の集大成ともいえる血統。後継が現れて、その血が遺ってもらいたいものです。

お悔やみ申し上げます。

夏に輝くサルサの女神 ~スパーキングサマーカップ・サルサディオーネの血統~

スパーキングサマーカップサルサディオーネが逃げ切った。
これでスパーキングレディーカップに続いて川崎マイルの重賞を連勝。一つはJRA交流、もう一つは牡馬とのレースと考えると、中身も濃い。
馬体の張り等見ても、今が充実期といえる。

妹のサルサレイアも頑張っている。
姉とは違って後方から捲り気味の競馬をするため勝ち味に遅いが、姉と同じJRA交流重賞にも出るくらいに成長した。
こちらも楽しみな一頭だ。

 

この2頭の母がサルサクイーン。的場文男騎手を乗せて東京プリンセス賞を勝った馬でもある。
繁殖牝馬としてサルサディオーネサルサレイアを輩出したとなると、名牝の一頭といってもいいだろう。

では、なぜサルサクイーンが繁殖牝馬として活躍馬を出せたのか。
もちろん、自身が東京プリンセス賞を勝つくらいの力があったことも理由のひとつであろうが、血統面からも考えてみたい。

 

サルサクイーンの輸入基礎牝馬は形の上ではハマナスⅡとなる。
ただ、血統的に語るならば、その両親であるLt.Stevensとナッシングライクアダム、そしてこれらの馬とノーザンテーストの関係から語るべきだろう。

まずは、ナッシングライクアダムとノーザンテーストの関係について。
この2頭の間にはシャダイダンサーという仔が生まれている。シャダイダンサーはノーザンテースト初年度の産駒であり、桜花賞3着になった馬でもある。
ノーザンテーストはその後サンデーサイレンスが来るまで日本でナンバー1種牡馬の地位を確立し、社台グループの発展に大きく寄与するのだが、そのきっかけとなったのがシャダイダンサーだったと言ってもいい。
だからというわけか、社台グループの創始者吉田善哉はナッシングライクアダムの血を重宝するようになる。

そのナッシングライクアダムにLt.Stevensが付けられて生まれたのがハマナスⅡ。シャダイダンサーの姉に当たる。
社台グループがハマナスⅡを輸入したのも、シャダイダンサーが活躍したからであろう。
社台グループはハマナスⅡにノーザンテーストを付ける。シャダイダンサーが走ったのだから、シャダイダンサーの半姉にノーザンテーストを付けるのもうまくいくだろう、という考えからだと思われる。
生まれたシャダイハマナスオークスエリザベス女王杯にも出走するオープン馬に成長。社台グループの目論見はまずまず成功したと言っていい。
その後、シャダイハマナスサルサクイーンの祖母となる。

今度はLt.Stevensとノーザンテーストについて書いていこう。
ノーザンテースト×母父Lt.Stevensの配合。競馬好きだと、シャダイハマナスではなく、一頭の馬を思い浮かべるのかもしれない。その一頭とはエレクトロアート、すなわちドリームジャーニーオルフェーヴルの祖母である。
オルフェーヴルなどのきょうだいが成功した理由をステイゴールド×母父メジロマックイーンの黄金配合とする人は多いが、個人的にはエレクトロアートにあるノーザンテースト×母父Lt.Stevensと、ステイゴールド側にあるダイナサッシュへスピードを供給しているノーザンテーストが上手にインブリードされたからだと思っている。
そういうわけで、ノーザンテースト×母父Lt.Stevensは母方に入って活躍馬を出す血となる要素を持っている。
それはなぜかと言えば、Lt.Stevensの血統にもあるのだろう。
Lt.Stevensの全妹はThongである。ThongからはSpecialなど名繁殖牝馬が誕生し、いまや日本の競馬界で、なくてはならない血となっている。
だから、Lt.Stevensの血を持った馬から名馬が出てくるというのだ。

このような血統背景を持っているサルサクイーンにゴールドアリュールを付けて生まれたのが、サルサディオーネである。
ゴールドアリュールの母ニキーヤもいい馬を多数輩出する名牝であり、その父はNureyev、つまり、Thongの血を持った馬となる。
そうすると、サルサディオーネには名牝を通じてのThongとLt.Stevensのきょうだいインブリードが成立することになる。
このインブリードがどこまで影響しているかわからないが、サルサディオーネの血統を語るうえで必須なのは間違いないように思える。

このように紡がれていく血の物語。
サルサディオーネは今後も活躍し、繁殖牝馬としてもいい子を出してもらいたい。

ながくつづくもの

柴田善臣騎手が8月8日にレパードSを勝ち、JRAの最年長重賞勝利記録を更新しました。
そうしたら、翌日9日にクラスターCでまたしても柴田善臣騎手が勝利。2日連続で重賞勝ちを収めたとともに、またもやJRA最年長重賞勝利記録を更新。
55歳にして2日連続重賞制覇、しかもJRA最年長重賞勝利記録更新のおまけつきというのですから、大したものです。
特に、クラスターCで内を突いて差してきた騎乗は見事でした。
ベテランの腕健在、といったところですね。

柴田善臣騎手がレパードSに乗っていたのがメイショウムラクモ、クラスターCに乗っていたのがリュウノユキナ。
今回は、その2頭の血統について書いてみます。

 

メイショウムラクモの輸入基礎牝馬はフロリースカツプといいます。
1907年、小岩井農場が「日本でも優秀な馬を」ということで、イギリスから基礎牝馬として良血な牝馬を20頭輸入してきました。そのうちの一頭がフロリースカツプでした。
フロリースカツプの牝系からはコダマやキタノカチドキニホンピロウイナーシスタートウショウスペシャルウィークウオッカなど名馬が多数出ております。
最近では、以前日記に書きましたが、レイパパレがこの牝系の出。

またまたこの牝系から活躍馬が出たことになります。

フロリースカツプの牝系でも特に活躍馬が多いのがライトフレームのファミリー。メイショウムラクモもこのライトフレームのファミリーですし、先ほど挙げた馬ではキタノカチドキニホンピロウイナーがそこに名を連ねております。
ニホンピロウイナー産駒と言ったらやはりヤマニンゼファー安田記念柴田善臣騎手に初G1制覇をもたらした馬でした。
柴田善臣騎手は、またライトフレームの血を持った馬で記録と作ったことになるわけです。
 

フロリースカツプ以外にも小岩井農場が輸入してきた繁殖牝馬は優秀でした。前日書いたプロポンチスもその一頭です。
その中でも、フロリースカツプと同じくらい繁栄した優秀な牝系が、ビユーチフルドリーマー系です。
フロリースカツプがコダマなら、ビユーチフルドリーマーからはシンザン。フロリースカツプがニホンピロウイナーなら、ビユーチフルドリーマーからはニッポーテイオー
シンザンという日本史上最大の名馬を輩出していることもあり、ビユーチフルドリーマーは岩手競馬でレース名になるくらい日本競馬に多大なる貢献をしてきました。
そんなビユーチフルドリーマー系は、近年ではワールドハヤブサを導入した千代田牧場を中心に残っています。
リュウノユキナは生産者こそ千代田牧場ではなく藤川ファームですが、ワールドハヤブサを祖とする馬。祖母ナギサは京都牝馬特別で2着になるなど重賞で活躍した名馬でした。
近年でもスマハマやグレイトパールなど活躍馬はいるものの、フロリースカツプ系に比べるとやや地味な印象のビユーチフルドリーマー系。それでもリュウノユキナのように6歳になってさらに強くなる馬を出すなど、底力は健在。
リュウノユキナは父ヴァーミリオンでもあり、ぜひとも種牡馬となってその血を残してもらいたい血統だと思っています。

 

ベテラン柴田善臣騎手の偉業を支えたのが日本の伝統的な牝系出身の2頭なのも、歴史が積み重なり繋いでいく競馬のロマンを表しているように感じます。そして、これだけ柴田善臣騎手の騎手生活やフロリースカツプ、ビユーチフルドリーマーの牝系が長く続いているのも、そこに確かな実力があるからなんでしょう。
これからも、ながくつづきますように。