自ら早めに先頭を捕まえに行って、そのまま離しての快勝。勝ち時計1分32秒7は桜花賞レコードと、実に見事な勝ちっぷりでした。
このグランアレグリアがデビューしたのが、2018年6月3日。JRAの新馬戦が始まった週でした。そこでグランアレグリアは、府中の芝マイルを1分33秒6と、6月の2歳馬にとって破格の時計で勝ち上がったのです。
その時の2着馬が、ダノンファンタジー。ダノンファンタジーも、1番人気として桜花賞を迎え、2着馬とは差のない4着と、力があるところを見せました。
このように、新馬開幕週にデビューした馬が人気となり、そのまま上位に入ったのが今年の桜花賞でした。
そして、来年以降も春のクラシックは、開幕週デビューとまではいかないにしても、早期デビューの馬が上位に入るという流れになると思うんです。
思えば、牝馬三冠のアーモンドアイは8月の新潟デビュー。東京優駿馬ワグネリアンは7月の中京。クラシックは勝っていないものの、スプリングSを勝利し、その後マイルCSを勝ったステルヴィオは新馬戦開幕週の府中で勝ち上がった馬でした。
オグリキャップの時代に競馬を見始めて、ダビスタ等のゲームで育った自分としては「真の強い馬は10月くらいにデビューするものだろ」と思ってしまうのですが、明らかに時代は変わりつつあります。
その原因の一つが調教技術の進化にあるのは間違いありません。素質馬であっても、その後の成長を阻害せずに、早めに仕上げることができるようになった。なら、ほかの馬がまだ仕上げ切っていないうちに出そう。
その流れを促進しているのが、2歳重賞の増加です。早めにクラシックに出られるだけの賞金を稼げるチャンスが増えた。なら、早期デビューした方が楽ではないか。
そのように考える人が増えてきているような気がします。
そして、調教技術の進化と2歳戦重賞の増加が、もう一つのトレンドを生み出していくと考えられます。それが、今回のグランアレグリアのように、ステップレースを挟まず直接クラシック本番に出走する、というパターンです。
かつては一叩きして、というのが常識でした。
しかし、素質馬が揃う3歳のステップレースともなると、ダメージの多く残ることが考えられます。
そこで、2歳のうちにクラシックに出られるだけの賞金を稼いだのなら、間隔をあけてむしろフレッシュな状態で出した方が好成績を収めることができるのではないか。
少なくとも、天栄やしがらきのような優れた施設を持った社台グループなら、レースやトレセンで負荷をかけなくても、成長を促すようなトレーニングはできます。そして実際、グランアレグリアは勝ちました。
アーモンドアイも、2歳からではないものの、年明けすぐのシンザン記念からのローテーションと、間隔をあけてのものでした。
以上のことからも、少なくとも、社台グループは今後早期デビュー+使い分け等も含めて間隔をあけての調整というパターンでクラシックに望むと思われます。
ただ、同時に、ほかの育成場の技術も進化し、3歳の重賞では逆にメンバーが手薄なものも出てきたので、場合によっては社台グループ以外の方が好成績を収める、なんてことが増えるかもしれません。今年の弥生賞やスプリングS、ニュージーランドトロフィーあたりはその例かもしれません。
ともあれ、今後の競馬界は、より早期デビューの流れになると思われます。
なら、晩成気味の馬はどうするのか。2歳の早い時期に番組の少ないダート馬はどうするのか。
何が競馬界のためになるか、その馬のためになるのか等、いろいろと考えながら、課題を解決できるようにしたいものです。