オグリキャップをもう一度

競馬好きの行政書士が競馬について気ままに書くブログ 馬主申請の代行も行っております

今、競馬が行われる意義 ~世界がいつかまた、騒がしくありますように。~

新型コロナウイルス感染症防止のため、緊急事態宣言が発せられた日本。

それでも、無観客ではあるものの、競馬は開催が続く決断をした。実際、私の事務所所在地の品川区にある大井競馬場は本日も競馬が行われている。

競馬好きとしては、この決断に感謝しかない。

 

ただ、一部では開催続投に疑問の声があるのも事実だ。多くのイベントが中止となっているのに競馬はやっていていいのか、おかしくないのか、と。

そうした声の根底にあるのは「そもそも競馬はギャンブルであり、けしからん」という思いだろう(今回の場合はそうでない人もいるだろうけど)。

 

確かに、競馬はいろいろな側面があるにせよ、ギャンブルである。そして、ギャンブルというのは基本的に違法である。だから、競馬を行う根拠として、競馬法というのが定められている。

法律の1条には趣旨・目的が定められているのが通常であるところ、競馬法の1条は以下のようになっている。

「この法律は、馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与するとともに、地方財政の改善を図るために行う競馬に関し規定するものとする。」

つまり、競馬の目的というのは

①馬の改良増殖その他畜産の振興と

地方財政の改善

にあるということになる。

新型コロナウイルスで様々なイベントや営業が中止となっている中、競馬がなお続けられている意義も、この目的にあると思われる。

すなわち、競馬の特色というのは、人だけでなく、馬が重要な役割を担っている点にある。人ならばさまざまな職に就くことができるし、仕事ができないなった場合でも補償をすれば暮らすことはできるかもしれない。

しかし、競走馬は走ることに存在意義がある。レースがなければ持て余してしまうことになる。そして、その馬に携わる人はたくさんいて、その人たちの生活もかかっている。特に、畜産業である牧場主にとっては馬の生産が無意味なものになってしまっては、廃業の危機となってしまう。

畜産業というのは、国の重要な産業の一つだ。そして、いったん衰退してしまったら、生き物を扱っている以上、回復するのが困難である。

畜産の振興のためにも、競馬は続かなければいけない。

 

そして、競馬のもう一つの目的が、地方財政の改善だ。

新型コロナウイルスの影響もあって、経済は停滞している。しかし、生活を守るための補償もなされなくてはいけない。そうすると、うまく経済を回さなくてはいけない。

競馬は売得金の一部が国に納付される。競馬も立派な経済活動であり、国家財政に貢献している行為なのだ。

こういった時だからこそ、競馬の収益というのは役に立つのだ。

 

とはいえ、目的があれば何でもやっていいわけではない。あくまで新型コロナウイルスの感染防止策が採られていなければならない。

その点競馬は、そもそも屋外で行われるものであり、無観客で行うならばいわゆる「三密」の危険は少ない。

購入者側は電話投票・ネット投票で購入することができる。映像面でも少なくとも地方競馬は無料のネットでリアル配信がなされているし、JRAも普段は有料のグリーンチャンネル競馬中継を無料で見られる措置をとっている。グリーンチャンネルが映らないところでも、ラジオNIKKEI等で聞くことはできる。「stay home」で楽しめる環境は整っている。

競馬を開催する側もしっかりと感染防止対策を採っている。JRAは騎手等の移動制限の措置も打ち出した。

競馬界は一丸となって新型コロナウイルス感染防止対策をしている。

 

競馬界の第一人者、武豊騎手は現在の状況についてこのようなメッセージを発している。

競馬は大事な娯楽で、今は自宅でもテレビ、ラジオなどを通じて楽しんでいただけています。そのためにも競馬を提供していかなければならないという気持ちを強く持っています。我々、騎手だけでなく、競馬人の皆がそう思っています。こういう状況だからこそ、安全確保に努め、続けていかなければと思っています。また競馬の売得金の一部を国に納付させていただいているし、そういった面からも今こそ競馬の存在意義を感じています

 ひょっとしたら「こんな時に娯楽なんて」という人がいる人がいるかもしれない。だけど、娯楽がまったくない世界であっていいのだろうか。とても味気のない世界になってしまうのではないか。

だからこそ、新型コロナウイルス感染防止策が採られているならば、娯楽であっても、いや、娯楽だからこそ、続いてもいいのではないか。大変な日常の楽しみになるのなら。

 

大井競馬は新年度の始まりに、新聞でこのような全面広告を出した。

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無観客のスタンドに、下に大きく「世界がいつかまた、騒がしくありますように。」の文字。あえて「騒がしく」というややよくない意味合いも含まれる言葉を使ったのは、競馬の熱狂さを表せるからだと思う。うまへんでもあるし。それに、自粛ムードが解消されたのを表すのにふさわしいからだと思う。

競馬界は、今の状況が収束するのを心から願っている。

自分もこの広告を見て、改めて思った。

一刻も早い新型コロナウイルスの収束を願うとともに、世界がいつかまた、騒がしくありますように。

こんな事態だからこそ、競馬は続かなくてはならない。