その間、地方勢は、2歳、3歳戦や牝馬重賞、短距離戦では交流G1でJRA勢を倒すことはできていたが、いわゆるクラシックディスタンスである2000m付近の古馬王道交流G1レースで勝つことはなかった。
10年ぶりに南関東所属の馬が、川崎記念のゴール板を先頭で駆け抜けた。しかも、南関東競馬生え抜きの馬でだ。
カジノフォンテン。
デビュー戦の勝ちっぷりから、高い素質の持ち主と期待されていた馬ではある。ただ、クラシック戦線では、まだ身体が出来上がっていなかったために、掲示板が精一杯という成績であった。
少し休んでからの3歳秋。馬体も充実したものになり、カジノフォンテンの快進撃は始まる。それでも、重賞では経験の浅さからか、我慢しきれず敗退することもあった。
さらに経験を積み、昨年末勝島王冠では南関東の大将ともいうべきモジアナフレイバーに勝利。そして、東京大賞典ではオメガパフュームに2着と迫るところまで成長した。
今回の勝利、確かに先行有利な馬場と枠に恵まれたものであったのは事実だ。
しかし、スタートをしっかりと決めたこと、最終コーナー回るときの手ごたえ、ラストも12秒6でまとめていることを考えると、やはり馬自身がパワーアップしていたのが何よりの勝因であろう。
思えば、カジノフォンテンの母ジーナフォンテンも、南関東競馬で活躍した馬だった。
今回のカジノフォンテンは、母が果たせなかった川崎記念制覇という夢も叶えたことになる。
母ジーナフォンテン。
そして、カジノフォンテンに乗っていたのは、母の主戦騎手だった張田京現調教師の息子である張田昂騎手。
厩務員はフリオーソも担当していた波多野厩務員。
そう考えると、南関東のこれまで培ってきた技術と血が、この大一番で見事に実を結んだといえる。
確かに、入ってくる馬の素質、環境面等から、地方勢がJRAに王道路線で勝つのは難しくなっている。
しかし、人の技術、馬に対する愛情では、負けていない。
そういったものが結集すれば、JRAにだって勝てるんだ。
ゴールの瞬間、張田昂騎手はガッツポーズをした。胸中いろいろとあったのだろう。
今回の川崎記念、たくさんの願いが叶ったように思えて、本当にうれしく思える。
今年最初のG1級レースからいいものを見ることができた。
今年も、たくさんいいレースを見られるよう、願う。