観客が「My Old Kentucky Home」を歌い、最も偉大な2分間が過ぎ、勝者にはバラのレイが掛けられる。
約5万人と、通常時より人数制限はされたものの、チャーチルダウンズに感動的な光景が戻ってきた。
ケンタッキーダービー。世界中の競馬関係者が最も勝ちたいレースのひとつである。
今年の勝者はMedina Spiritだった。1歳時はわずか1,000ドル、2歳時でも35,000ドルで取引と、決して高価ではない馬の勝利。これぞアメリカンドリームである。
広大な土地を持ち様々な地域で生産がなされているアメリカと、馬産地が一極に集中している日本とでは事情が異なるが、可能性だけなら日本でも400万円くらいの価格で取引された馬が東京優駿を勝つこともありうる、ということを示したといえる。そう考えると、改めて夢のある世界だと感じる。
Medina Spiritの勝利には、環境面もあげられよう。
管理厩舎であるボブ・バファート師はこれでケンタッキーダービー7勝。名伯楽に預けられたというのも大きい。
そして、何より関係者の強い馬になってもらいたいという想いがあったからだろう。
もちろん、そのような想いは競馬関係者ならだれもが持っている(と思いたい)。そして、そのための努力を皆行っている。
それでも、大きなレースを勝てるのは一握りの馬だけ。
だからこそ、あきらめずに強い馬づくりをしなければならない。
それが競馬の難しさでもあり、面白さでもある。
Medina Spiritは決して高価な馬ではなかった。でも、関係者の努力があったから、それがうまく実ったから、ケンタッキーダービーを勝てたのだろう。
一番人気だったEssential Qualityは4着に敗れた。スタートでやや遅れて挟まれたうえ、同中ずっと外を回ったからだと思われる。
またしてもTapit系はケンタッキーダービーを勝てなかった。気性や走法的に向かないというのはあるにせよ、北米リーディングサイヤーにもなり、名種牡馬としての地位を確立したTapitの産駒が勝てないというのは、七不思議のひとつともいえよう(他の不思議って何ですかね?)。
これも競馬の難しさ。
競馬は難しい。だから面白い。そして、夢がある。
そんなことを感じた偉大な2分間。
いつかはケンタッキーダービーを勝ちたい。そんな夢を実現できたらいいな、と思います。