オグリキャップをもう一度

競馬好きの行政書士が競馬について気ままに書くブログ 馬主申請の代行も行っております

エフフォーリアと心房細動についてのお話

エフフォーリアが京都記念で心房細動を発症し、競走中止
結果的に競走生活を引退することとなった。

 

競馬をやっている人なら心房細動という言葉を聞いたことがあるだろう。
簡単に言えば、心臓で血液を送るための電気信号に異常が発生し、心室にも流れるはずの電気信号が心房のみに流れ、血液が身体にうまく行き渡らなくなる状態のことをいう。
血液が身体にうまく行き渡らないから、ガス欠をおこす。そのため、レース中に心房細動となった馬は、急激に失速する。

 

馬の心房細動は、人の心房細動と違う点がある。
ひとつは、発症するケースのほとんど(すべてといっていい)がレース中であること。
もうひとつが、9割がすぐに治ることである。
そのため、心房細動になった馬でも、その後活躍するケースは結構ある。

 

そんな心房細動になる原因というのは、完全には解明されていない。
ただ、短距離でなる馬が少なく、発症する馬はほとんど中・長距離のレースを走っているときであること、人間はストレスや不規則な生活でなりやすいことから、心身ともにある程度長い時間心臓に負担がかかることでなるものだと考えられる。
また、ラットの実験で解明されたことであるが、心房細動になるのは心臓が大きい個体の方が多いということだ。おそらく電気信号が心房のみに流れるバグというのは、心房にそれなりの大きさがないと起こりにくいからだと思われる。
(漫画のマキバオーでほぼこれと同じことが解説されていたので、やはりあの漫画は偉大である)

ちなみに、心臓の大きさと競走能力というのは大きな関係がある。心臓が大きい方が、一般的に競走能力が高いというのがビッグデータ上でも示されているのである。
そうなると、心房細動になるのは競走能力の高い馬の方がなりやすいことになる。確かに、発症率の割に心房細動になったと聞くのはレベルの高いレースの方が多い気がする。
また、単純に心臓の大きさと馬体の大きさは比例しやすいので、身体が大きい馬の方がなりやすいのだろう(大型馬の方が、競走能力が高いという意味ではないことに注意)。
昔のネーハイシーザー菊花賞で心房細動を発症したが、のちに天皇賞(秋)を勝利。ソーヴァリアントはオールカマーで心房細動となったが、続くチャレンジカップは勝利。有馬記念馬ブラストワンピースも心房細動となったことがある。いずれも馬体重が500キロ近くある大型馬だ。
そして、エフフォーリアもまた競走能力の高い大型馬だ。

だからというわけではないが「心房細動明けの馬は買い」という格言もある。心房細動になれば見かけ上の着順が悪くなって人気は少しなくなるのに、すぐ治って身体面の影響は少ないうえに競走能力の高さが担保されているので、配当的旨みが出るからであろう。

 

だが、エフフォーリアは引退することにした。
心房細動になる原因が完全には解明されていないことから断言はできないが、今回はストレスによる可能性が高いからであろう。
前述したが、一般的に馬の心房細動はすぐ治るうえに、身体的な影響はまったくといっていいほどないと言われている。
しかし、精神面でその後走るのをやめてしまうようになる馬もいるらしい。
古馬となったエフフォーリアは、何が影響かわからないが、走りに前向きではなかった。闘志を引き出そうと、有馬記念では入念な本馬場入場を行ったほどである。
有馬記念で少し光が見えた中での、今回の心房細動。精神面を考慮すると、ここで引退の方がいいという判断なのだろう。

 

復活を期待していた身としては、寂しくもある。
共同通信杯で見せた強さは忘れることがないだろう。だから皐月賞有馬記念では自信を持って本命にすることができたし、その期待に応える強さを見せてくれた。
コントレイルに勝った天皇賞(秋)はエフフォーリアの時代が到来したと思わせるほどの強さだった。
古馬になって負けを重ねたが、3歳時に見せた強さが色あせることはない。
たくさんの「強い幸福感(エフフォーリア)」を競馬ファンに見せた名馬である。

 

だから、感謝の気持ちで送り出したい。
競走馬生活お疲れ様でした。
その後の馬生が強い幸福感で満たされますように。