オグリキャップをもう一度

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ロマンあふれる良血重戦車 ~メジロアルダン~

昨日は「メジロライアン」と見せかけて「ライアン」の話を書きましたが、今日はメジロの名馬、メジロアルダンについて書きます。
まあ、昨日ウマ娘関連で話題になったみたいなので、便乗する形ですが。

 

ウマ娘で強いカードになったらしいメジロアルダン(ゲームのウマ娘にあまり詳しくないので、なんとなく強いカードになったことしかわからないのです)。
ただ、一部で「G1を勝っていないのに、なんでそんないいカードにするんだ」という声があったようです。

これに対しての自分の意見は、次のとおりです。
メジロアルダンはG1を勝てる素質はあった馬だよ。それも、ひとつだけでなく、いくつも」

メジロを代表する名門アマゾンウォリアー牝系の出。なにより初の牝馬三冠馬となったメジロラモーヌの弟でもあります。
そして、雄大な馬体からダイナミックに首を使っての迫力ある走り。あまりの力強さに「重戦車」と表現する人もいました。
その血統と姿を見れば、誰もが能力の高さを疑いませんでした。
ただ、生まれたときから体質の弱さがネックでした。
それは、父アスワンが両前脚の内向により脚部不安に悩まされていたのも理由のひとつかもしれません。
また、一方が死産だったからとはいえ、胎内では双子だったからかもしれません。サラブレッドの双子は胎内で成長しにくいなどの理由で虚弱な馬となりやすくなってしまうのです。
その体質の弱さのため、満足に調教できず、デビューは4歳(現在の表記では3歳)の3月と、クラシックシーズンがかなり進んでしまってから。
にもかかわらず、能力の高さでデビューからわずか3か月後の東京優駿に出走するのです。東京優駿は惜しくもサクラチヨノオーに差し返されての2着。デビューから3ヶ月の馬が東京優駿という大舞台であわやというレースを見せたのは快挙と言っていいでしょう。
しかし、東京優駿後骨折が判明し、次走は1年後のメイステークス。そこを勝って、高松宮杯では安田記念バンブーメモリー相手にレコードタイムで2馬身半の差をつける快勝。
やはりメジロアルダンは強い。
そして、今でも名勝負と言われる1989年の毎日王冠へと駒を進めます。
ライバルは休み明けのオールカマーをレコードで勝った芦毛の怪物・オグリキャップと、天皇賞(春)宝塚記念を勝った「野武士」イナリワンなど。地方競馬からやってきたスターホースに、未知の魅力を持ったメジロの良血メジロアルダンが挑む構図は当時わくわくするものでした。
メジロアルダンの能力を試すためにオグリキャップイナリワンとの脚比べをしようとわざと追い出しを我慢した岡部騎手。そのメジロアルダンを外から一気にかわしたオグリキャップイナリワンの叩き合い。3頭並んで2頭になって、結果はハナ差でオグリキャップの勝利。今後のG1レースはどれだけ凄いレースになるんだろう。そんな予感を抱かせるには十分の名勝負でした。
毎日王冠で負けてしまったメジロアルダンは、天皇賞(秋)スーパークリークオグリキャップからクビ差、クビ差の3着。
さあこれから、というときに、今度は屈腱炎でまた長期休養に入ってしまいます。
復帰は約一年後のオールカマー
オールカマーこそ4着に敗れますが、次走天皇賞(秋)では2着。ヤエノムテキに屈しましたが、オグリキャップには先着する激走でした。
しかし、有馬記念は10着、日経新春杯は4着で、また屈腱炎が発症。この敗因には右回りということもありますが、脚部不安もあったと思います。

約10か月後の11月に復帰しますが、そこにはかつての迫力ある馬体をしたメジロアルダンはいませんでした。結果的に富士ステークスは6着、ジャパンカップは14着と大敗。これを最後に引退します。

2着に敗れた東京優駿はレース中に骨折していたという話もあります。
現役生活で合わせて約3年にも及ぶ長期休養があるうえに、もともとの体質の弱さもあって満足に調教できなかったところもあります。
もし脚部不安がなければ、万全の出来で走ることが出来たなら、オグリキャップスーパークリークイナリワンヤエノムテキなどとどんな名勝負を繰り広げたであろうか。G1をいくつ勝てただろうか。そう思わせるには十分の能力を持った馬であり、ロマンあふれる馬でした。

 

引退したメジロアルダンは良血を買われて種牡馬になりますが、日本ではあまり産駒が走らず2001年に中国へ輸出されます。
そして、中国に輸出されてわずか1年の2002年に種付け中に死亡。
異国の地でわずか2世代の中からメジロアルダンは一頭の名馬を誕生させます。
それがWu Di(无敌)という馬。中国で27勝、中国のグランプリレースを3連覇、1400m~8000m(!)のレースで勝利するという驚異的な成績を残した名馬です。
Wu Diは2015年に中国の種牡馬リーディングに輝くなど種牡馬としても活躍。
日本で栄誉を極めたノーザンテーストですが、その直系は絶えてしまいました。しかし、中国でメジロアルダンを経由してノーザンテーストの直系は残っています。
もしWu Diの子や孫が日本にやってきたら、種牡馬としてやってきたら、日本競馬史に残るノーザンテーストの直系が復活することになります。
現状は中国から日本にサラブレッドが輸入された例が無く、国家間の取り決めで難しい状況ですが、実現したら奇跡のような話になります。
メジロアルダンの血には、そんなロマンもあふれているのです。

 

本当に魅力的な馬だったメジロアルダン
今回メジロアルダンのカードが出たことで、実物のメジロアルダンのファンも増えてもらえたら幸いです。