「5年前の今日、何をしていましたか?」
昨日受けた研修で、よくあるような問いを投げかけられた。
5年前は、平成最後の日であった。
5年後どうなっていたいのかという話なので、平成最後の日であったことに意味があるのかはわからないけど、たまたまとはいえ意味めいたものを感じる。
そして、私は、5年前の昨日、以下のブログを書いていた。
keiba-gyoseisyoshi.hatenablog.com
要約すれば、天皇賞・春で初めてディープインパクト産駒が勝ったこと。ぶっつけでの天皇賞・春が当たり前になってきたこと。そして、競走馬の生産者の思いは変わらず残ること、という内容だ。
このブログから5年。
今年の天皇賞・春を勝ったのは、非社台グループ生産馬であるテーオーロイヤルであった。それも、ダイヤモンドS→阪神大賞典→天皇賞・春とレースを使って。
思えば、この5年で競馬界は少し変わった。
誰もが想定していなかったコロナ禍は、競馬界にとって、ネットでの購入が大幅に増え、売り上げが上がるという利益をももたらした。
同時に、無観客競馬の開催。その中で生まれた無敗の三冠馬コントレイル、無敗の三冠牝馬デアリングタクト。
ウマ娘ブームという外的な要因もあった。ただ、5年前、すでにウマ娘プロジェクトはあったわけで、その当時ブームになると誰が予想したであろうか(リリース延期ばかりで立ち消えになるだろうと思われていたのに)。
生産現場でいえば、ディープインパクト、キングカメハメハの二大種牡馬の死去。
改めて考えてみると、アフターディープ・キンカメ時代となり、レースの性質が変わったようにも思える。それが現れたのが、今年の天皇賞・春であったのかもしれない。
前述のように、今回のテーオーロイヤルは使い詰めでの出走だった。
にもかかわらず、連戦の疲れは感じさせず、むしろ1戦ごとにパワーアップすらしているように思えた。
日高対社台グループの構図にするのはステレオタイプに過ぎるが、ぶっつけで本番というローテーションは、施設が充実している外厩を備えた社台グループが得意とするものであった。
ただそれは、休み明けでも(休み明けの方が)走るディープインパクトの血があってこその作戦だったのかもしれない。あるいは、一戦での消費が激しい馬向きの作戦であったのかもしれない。
個体差があり、すべてがそうとは言えないが、日高の馬なら、レースを使って強くするというのも一つの方法であるのだろう。
もちろん、テーオーロイヤルに素質があり、今回のローテーションに向く体質だったというのはあるにせよ。
そして、もう一つ、レースの性質が変わったと思うことがある。以前より道中溜めて爆発させるという時代ではなくなったきたのではないだろうかと。
そこには、前が止まらない高速馬場の影響もあるが、何よりディープインパクト(というかサンデーサイレンスか)の血が薄れてきたことにあると思う。
それにもかかわらず、長年続いてきた「溜めて爆発」させようという騎手心理が働いて、結果的に持続的なスピードを持った先行馬にやられるというレースも見られるようになった。
さらに、ミスプロ系のみならず、ノーザンダンサー系の復興、はたまた2歳の時期なら持続的なスピードに富んだダート血統の台頭というようなものも見られるようになりつつある。
代わりに切れが要求されるレースの場合は、より軽く切れやすい牝馬も勝負になるという現象も起きている。ダートでも以前より牝馬の台頭が目立ってきているのはおもしろいが。
これらの事実は、おそらく一つのものが原因ではないと思う。
社台グループ以外の育成能力の向上、牝馬でも牡馬と変わらないほどの強さを持つ馬を育てられる技術、環境、あるいは偶然の要素もあるのかもしれない。
様々な要素をひっくるめて、次のレースでの勝利に結びつける努力をしなくてはいけない。
冒頭の問の後に発せられた問、すなわち、5年後はどうなっているか。
種牡馬コントレイルの時代になっているのか。はたまた種牡馬戦国時代となるのか。
ダート改革による変化は。
世界の中で日本の競馬の立ち位置はどうなっているのか。
夢を描くことはできるが、実現するには実行しなくてはいけない。
5年後の我々へ。
描いた夢はどうなりましたか。