変わるもの 変わらないもの
もうすぐ平成が終わろうとしている。
年号が変わる意味合いは昔ほどないのかもしれないし、何もかもが新しくなるわけではない。日常はつづく。それでも、ちょうど大型連休。この機会にひとつの時代を振り返るのもいいかもしれない。
時代によって、変わったことなども含めて。
JRAでいえば、平成最後のG1競走が終わった。
天皇賞(春)。平成でこのレースほど意味合いが変わった、ひいては最近の競馬が変わったと実感するレースはないだろう。
かつては「八大競走」の一つとして、古馬にとって最も名誉あるレースだった。
それが、スタミナよりスピードを求める競馬となり、ステイヤーは前より持て囃されなくなった。そのことにより、天皇賞(春)に出る馬も、頭数が減ってきた。
今回は13頭立て。G1を勝っていたのはフィエールマンのみという状況だった。
必ずしも天皇賞を勝つのが名誉というわけではない。より馬にとって適性があり、引退後の価値が上がるレースに出る。そういう流れになってきた。
そして、今回の天皇賞(春)の結果で、また時代は変わったということを実感する。これまで天皇賞(春)を勝てなかったディープインパクト産駒がワンツーフィニッシュを決めたのだから。
もともとディープインパクトの遺伝子は長距離型であるので、これまで勝てなかったのが不思議という見方はできる。とはいえ、ディープインパクト産駒のキレはクラシックディスタンスでこそのものであり、より長い距離だと鈍るものであった。
今回ディープインパクト産駒がワンツーを決めたのは中盤で一気にペースが落ちるラップであったからかもしれない。とはいえ、天皇賞(春)でディープインパクト産駒が勝ったのは事実だ。より競馬が瞬発力重視へと流れていくのは間違いないだろう。
もう一つは、勝ったフィエールマンも2着のグローリーヴェイズも1月以降レースを使わず天皇賞(春)に臨んだこと。これは、桜花賞の後にも書いたが、調教技術の発達により、レースに使わなくても負荷をかけられるようになったこと、休み明けでもレース感が鈍らず、フレッシュな状態で力が発揮できやすくなったことなどが理由としてあげられる。
レースレベルの向上で、1回競馬使うことによる負担は以前よりも増したと考えられる。ならば、レース間隔をあけたほうが疲れのないいい状態で出られる、というわけだ。
社台グループを中心に、この傾向はますます強くなるであろう。トライアルレースなどの重要性も変わってくるに違いない。
ただ、変わらないものもあった。
日本競馬の長距離界はメジロの血とともにあった。
平成になると、メジロティターンの子であるメジロマックイーンが長距離界の頂点に君臨した。
そして、今回の天皇賞(春)。牝馬三冠馬メジロラモーヌの牝系からなるグローリーヴェイズが2着に入った。
よりスピードが求められる時代となっても、なお天皇賞(春)で好走するメジロの血。そこに、メジロの紡いできた血の思いが感じられる。
確かに、時代によって競馬のトレンドは変わっていく。
しかし、それでも変わらないものがある。
より強い馬をつくろうという人々の思いと、競走馬の親から子へ代々受け継がれていく血のロマン。無事に走ってくれという祈り。などなど。
平成が終わり、令和になる。
令和になっても、競馬の魅力は変わらず残る。そう信じて。