オグリキャップをもう一度

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クインの血、世界の女王となる

JBCの血統的振り返りの途中ですが、本馬のBCで日本競馬史上に残る偉業が達成されましたので、先にそちらを。

ブリーダーズカップシリーズで日本馬が2勝をあげる快挙。しかも、そのうち一つは、ブリーダーズカップシリーズが創設されたときからある7つのレースのひとつ、BCディスタフなのですから。

アメリカ競馬はご存じのようにダートの方が盛ん。基本的に強い馬はダートに集まります。
その中でもBCディスタフは過去ゼニヤッタなどが勝っているように、アメリカナンバー1牝馬決定戦の意味合いが強いレース。そのレースを日本馬が勝つのだから、マルシュロレーヌが成し遂げたことは、日本競馬界においてもっと称えられるべき偉業なわけです。

 

さて、そんなマルシュロレーヌの血統について、アメリカでも話題になっているようです。

父は三冠馬オルフェーヴル。スタミナを活かして意外とダートで活躍馬を出しております。
オルフェーヴルの父、母ともにノーザンテーストへのニックス配合がなされており、ノーザンテーストインブリードでさらに活性化させ、サンデーサイレンスでピリッとさせるというのがオルフェーヴルの配合でした。
それは、社台グループが日本のトップグループになる軌跡と重なるところがあります。

それ以上に、日本競馬の歴史を感じるのが、マルシュロレーヌの牝系です。
5代血統表を見て、ぱっと目に付くのが、桜花賞キョウエイマーチ
さらに遡っていっても、カタカナの名前ばかり。それだけ日本生産の馬でつながっていた証拠です。
7代前まで遡ると、クインナルビーという名があります。牝馬でありながら天皇賞を勝った馬です。このクインナルビーから繋がる牝系は、キョウエイマーチの他に、日本競馬史に残る名馬を輩出しております。それが、オグリキャップです。
日本競馬史上最大のアイドルホースを輩出した牝系が、今度は日本競馬史に残る快挙を成し遂げた。そう考えると、ものすごい可能性を秘めた牝系なのだと感じます。
クインナルビーオグリキャップキョウエイマーチと、約70年にわたる日本競馬界の名馬が出てくる牝系。そして、キョウエイマーチ産駒で唯一繁殖に残ったヴィートマルシェからダート競馬の本場アメリカの女王決定戦を勝つ馬が現れるのだから、競馬はブラッドスポーツであり、感動的なものだと感じます。
脈々と受け継がれるクインナルビーの血。この名牝の血がマルシュロレーヌを得て、今後も続いていくことを願います。

JBCを振り返る その1・JBCレディスクラシック

ジャスタウェイという種牡馬は評価に悩む。
G1馬も輩出しているし、クラシックで人気になった馬もいる。短距離重賞を勝った馬もいるし、ダートで活躍する馬もいる。
そう書くと、優秀な種牡馬な気がする。
ただ、「何か思っていたのと違う」という感じがあるのも事実だ。証拠に、種付け料も種付け頭数も減少している。世代別のリーディング順位も下降傾向である。アーニングインデックスも格別いいわけではない。

思っていたのとは違う。けど、意外と幅広いタイプを出す。
そのことが、つかみどころのなさを感じてしまうのだろう。
適性がわかりにくいから、配合しても産駒のイメージがつかない。
けど、ハマった条件を見つけたら、活躍する。
そう考えると、なるほどWild Againの血だな、と思ってしまう。

 

JBCレディスクラシックを勝ったのは、ジャスタウェイ産駒のテオレーマだった。
もともと末脚には定評があった。けど、勝ち味に遅かったというのは、父ジャスタウェイを彷彿とさせる。
父と違うのは、ダートを主戦としていること。
Wild Againの血もあってか、ジャスタウェイは晩成気味のダート馬を出しつつある。

といっても、ジャスタウェイは芝の短距離馬も多く出しているのだから、父方だけで説明するのも難しい。そもそも特徴を説明するのが難しいのが、種牡馬ジャスタウェイなのだから。
ということで、母方を見てみると、5代前の母にVictorian Queenという名がある。カナダで重賞を12勝、アメリカの重賞でも好走した名牝であり、ジャッジアンジェルーチの母でもある。
ジャッジアンジェルーチは社台グループが導入した中で失敗した種牡馬という評価が多かった。その近辺で導入したトニービンサンデーサイレンスが大活躍し、ジャッジアンジェルーチの配合相手の質も両馬と同じか、トニービンと比べたら高いと言われていた中で、活躍馬を全くと言っていいほど出せなかったのだから、しょうがない。
ただ、母の父としてアジュディミツオーなど走るのが出てきたうえ、キタサンブラックが登場し、母方に入れば走る仔を出すという評価も見られるようになった。
そんなジャッジアンジェルーチを出したVictorian Queenは、他にもブルーグラスSを勝ったウォーやジョンヘンリーハンデを勝ったピースなどを輩出したうえ、Teofiloの曾祖母になり、名牝系にもなった。基本的にはダートで活躍するパワフルな能力を伝えやすい傾向にある。
そのパワフルさがテオレーマのダート適性にも受け継がれたのかもしれない。
名牝系の能力を受け継ぐ走りで見事にダート女王に輝いたテオレーマ。今後の走りも、繁殖としても、楽しみである。

右回り巧者と左回り巧者と

バタバタしていて書きたかったことも書けないでいました。
競馬は毎日やっているので、すぐにネタが古くなってしまいますね。なんとか新鮮なうちに提供できるよう頑張ります。

 

先週のダービーグランプリでギガキングが勝ちました。
同馬は2歳時に南部駒賞も勝っており、これで盛岡コースは2戦2勝。他に船橋競馬場東京湾カップを勝っているように、どちらかといえば左回り巧者のように思えます。

前に少し触れましたが、ギガキングはセイリングビューティの一族。オメガパフュームが近親に当たります。
しかし、オメガパフュームは特に大井2000mが得意な右回り巧者として知られています。

一般的に馬の心臓は左にあることから、左回りの方が回りやすいと言われています。同時に、左回りだと左側にラチがあることから苦しいときにラチを頼りがちになります。そのため、ラチに頼らずにもうひと踏ん張りできる馬は心臓が優れているとも言われています。
とは言っても、心臓の位置や強さだけで右回り巧者や左回り巧者になるわけではありません。筋肉の付き方、骨格の形、癖等いろいろと考えられます。
なので、同じ牝系だからって、右回り巧者と左回り巧者が出てくるのでしょうね。人間でもきょうだいで右利き・左利きと違うことがあるように。

そういう意味では、結局馬そのものを視ないといけないわけです。なんで右回りが得意なんだろう、左回りの方がよく走るんだろうと。個別に理由があるはずですし。
血統は一つの補助材料。似た血統で違う性質も出るから面白いのです。

セイリングビューティ牝系を見て、改めて競馬はいろいろと視て学ばないといけないことがあると感じました。

今週の競馬

週末はスプリンターズSダービーグランプリ凱旋門賞など様々なレースがあって、ネタもたくさん。
追々書いていきます。

10月最初の月曜日。新期の始まりでもありますし、競馬でも大きいレースが目白押しとなる季節。
楽しみですね。

それでは今週の競馬について。

 

・10月5日(火)、金沢競馬場兼六園ジュニアカップが行われます。地方全国交流の2歳戦。少頭数ですが、レベルの高いホッカイドウ競馬南関東競馬からの参戦もあり、楽しみな一戦です。

・10月6日(水)、大井競馬場東京盃が行われます。JBCスプリントに向けた重要な前哨戦。JRA勢からは前走クラスターカップを買って好調のリュウノユキナやルメールに乗り替わるコパノキッキングなど、迎え撃つ南関東勢は昨年のJBCスプリント覇者サブノジュニアやアフター5スター賞を制した3歳の新鋭ワールドリングなどが出走します。熱戦を期待したいですね。

・10月7日(木)、門別競馬場で瑞穂賞が行われます。道営記念の大事な前哨戦。旭岳賞を勝ったクイーンズサターンや昨年道営記念2着だったルールソヴァール、道営に移籍し前走勝利をあげた実績馬ウタマロなどが出走します。大一番に向けた戦いに注目です。

・10月7日、大井競馬場レディスプレリュードが行われます。JBCレディスクラシックのトライアル。関東オークスを制した3歳馬ウェルドーンの参戦が注目です。

JRAは今週から東京・阪神・新潟の3場開催になります。重賞は10月9日(土)東京競馬場サウジアラビアRC、10月10日(日)東京競馬場毎日王冠阪神競馬場京都大賞典となっております。

サウジアラビアRCはダノンプレミアム、グランアレグリア、ステラヴェローチェなど近年活躍馬を輩出している2歳の登竜門。今年もコマンドラインなど評判馬が登録をしております。

天皇賞(秋)の大事な前哨戦となる毎日王冠。ただ、近年は直接天皇賞へ向かう馬などが増え、様相が変わってきた感もあります。それでもレベルの高い馬が揃いますが。今年の注目は、安田記念を勝ったダノンキングリー対NHKマイルカップを勝ち、安田記念では3着だった3歳馬シュネルマイスターの対決でしょうか。

毎日王冠以上に天皇賞(秋)と直結しなくなったような感じがする京都大賞典。それでも長距離型の古馬が参戦し、混戦にもなりやすいです。今年はアリストテレスが有力ですが、マカヒキ、キセキといった実績のある古豪にも頑張ってもらいたいところです。

職業倫理

今週、JRAの調教助手が動画投稿サイトで競馬予想を載せる行為をしていたということで、処分が下されました。
また先週は、佐賀競馬でですが、岩永千明騎手が通信機器を持ちこんで騎乗停止になりました。

確かに、スマホを持っているのが当たり前な時代では、通信機器の持ちこみ=情報を流すではないかもしれません。また、調教助手が予想を載せたからって、その予想が当たる、あるいは、わざと負けさせて消し馬情報にするということはないかもしれません。
しかし、一般的に見てどうでしょうか。裏情報を流す、八百長をする可能性は否定できません。
そもそも競馬は本来なら刑事罰となりうる賭博行為です。それを国や地方自治体が法をもって特別に認めているのです。だから、何より法により開催できていることを重視し、公正でなくてはいけません。関係者の予想行為禁止や騎手の調整ルームへの通信機器の持ち込み禁止は、公正という趣旨のためにあるのです。
その趣旨から考えれば、「可能性」が少しでもある以上、禁止を徹底しないといけません。
携帯電話は現代社会で必須の連絡ツールだとか、より情報発信をするために動画を始めましたとか、事情はあるかもしれません。それでも、競馬が法によって認められた賭博である以上、国民が公正さに対して疑念を抱かせるような行為は慎まなければなりません。
当たり前ですが、通信機器を一切持つことができないわけではないですし、予想行為以外ならSNS等で情報発信をすることはできます。その点では、禁止態様としてもそこまで厳しくないでしょう。

結局、職業によっては、その職に相応しい倫理があるのです。
競馬界はなおさら厳しく律しなくてはいけません。
とは言っても、なぜその禁止規定があるか理解できていないと、ついうっかりということもあり得ます。
なので、大切なのは、競馬界にとって重要な目的のためにあるということ、それをしっかりと伝えることなのかもしれません。
法律家として、そして、競馬を愛するものとして、公正な競馬のお役に立てることができたら、と思っております。
そして、自分も倫理を大切にしないといけないなと実感しました。

スーパーカーの源は今なお健在 ~Quillについて~

昨日ブログで書いたランディスシティ。4代前の母がザベリワンだということについても、昨日触れた。
改めてザベリワンの血統を見てみると、父がOne for Allだったということに気づく。
現在南関東に、父ディープインパクト×母ラヴェリータのワンフォーオールという馬がいるが、もちろん同名の別馬。ザベリワンの父であるOne for Allは父Northern Dancer×母Quillという血統でカナディアンインターナショナルなどを勝った馬である。
Northern Dancerについては今更説明する必要はないであろう。
今回書きたいのは、母Quillの方である。
日本でQuillが知られるとしたら、次の事実によってであろう。マルゼンスキーの祖母であるということだ。
橋本聖子さんの父橋本善吉氏がQuillの娘シルを日本に輸入し、輸入時シルのお腹の中にいたのがマルゼンスキー。様々な逸話を残し、そのスピードから「スーパーカー」と言われた名馬である。今ではウマ娘にも登場し、若い競馬ファンにもお馴染みとなった。
マルゼンスキーのスピードは父Nijinskyによる部分もあるが、母方からも影響を受けているといえるだろう。祖母Quill自身がエイコーンSなどアメリカの主要レースを勝ち、最優秀2歳牝馬にも選ばれるほどの牝馬であったのだから。
そんなQuillに名種牡馬Buckpasserを付けて生まれたのがシル。当時の日本ではお目にかかれないほどの良血だったと言える。
シルの仔はマルゼンスキー以外思ったほど走らなかったが、それは橋本善吉氏が「何を付けても走るだろうと勘違いしてしまった」ことが理由と言われている。それでも25歳というかなりの高齢になるまで繁殖生活を続け、マルゼンスキーが亡くなった際にその葬式にシルが参列しているのだから、やはり生命力はあったのだろう。

Quillについて書きたくなったのは、もう一つ理由があってのこと。
昨日行われた白山大賞典。馬場を味方につけてメイショウカズサが逃げ切った。そのメイショウカズサがQuill→シルと続く牝系出身なのだ。
先ほど「思ったほど走らなかった」と書いたが、シルから続く血は今なお受け継がれている。それも、重賞を勝てるくらいに。
改めて思う。マルゼンスキーという馬を構成する血の凄さを。
そして、その血がこれからも受け継がれることを願うばかりである。

走れ東京シティ競馬を 走れ世界へ

2着馬に4秒1差をつけての圧勝。それも、持ったままだった。
噂通り、いや、着差を見れば噂以上の勝ち方だった。
その馬の名は、ランディスシティ。育成段階では先日大井で行われた2歳重賞ゴールドジュニアでこの時期の2歳馬ではお目にかかれない時計で勝ったママママカロニ以上に動いていたというのだから、そのすごさが分かる。

久しぶりに大井競馬場に現れた怪物候補は、海の向こうアメリカからやってきた。
外国産馬限定で南関東競馬向けに共有馬主を募集しているトラヴァーズサラブレッドクラブの一期生。
父はBCスプリント覇者のRunhappyに母の父Speightstownという文字からも、どれだけパワフルなスピードを持っているのか楽しみになる。
それだけではない。4代前の母に「The Very One」という名がある。第1回ジャパンカップに「100万ドルホース」としてアメリカから来日し、一番人気となったザベリワンのことだ。ジャパンカップでは3着だったが、世界的に有名だった牝馬の参戦は、当時まだ世界へ挑戦することが少なかった日本の競馬界に世界一流の馬が纏っているオーラを伝えてくれた。
そんなザベリワンの血を持った馬が、大井競馬で走る。しかも、大きな舞台での活躍を予感させる走りを見せて。
アメリカ競馬と日本の競馬の懸け橋となったザベリワンの血が、今度は日本からアメリカ競馬へ挑戦する懸け橋となる。
ランディスシティ。そして、ランディスワールド。
ケンタッキーダービーのゲートにランディスシティが収まる。チャーチルダウンズの馬場を駆け抜ける。
そんな夢を見てみたくなった。