オグリキャップをもう一度

競馬好きの行政書士が競馬について気ままに書くブログ 馬主申請の代行も行っております

法令遵守の時代に

いいこともあれば、悪いこともある。それが世の中というものか。

 

コロナ禍という状況においても、競馬界はスター誕生などに盛り上がり、売り上げも上々。若者や「UMAJO」といった女性層も増えてきており、レジャーのひとつとして定着していた。

しかし、競馬は基本的にギャンブルであり(ギャンブルであることとレジャーであることは決して相反するものではなく、両立するが)、サラブレッドという500キロ近い馬を扱う特殊な世界でもある。

そのため、特殊性ゆえの「村社会」になりがちである。

そして、日本において賭博は犯罪であり(賭博罪(刑法185条本文))、競馬法という法律によって競馬が認められていることからすると、何より法令遵守の姿勢が求められる。ギャンブルにおいて、公正であることの担保が、何より認められるうえで重要であるから。

ただ、得てして「村社会」と法令遵守は、相容れないものになってしまう。法令よりも、村社会でできた「暗黙のルール」とでもいうものが重要視されがちになってしまうので。

 

最近報道された競馬のイメージダウンにつながる記事がいくつかあった。

ひとつ目は、JRAの木村哲也厩舎の暴力事件。

詳しい事情は分からないうえに、訴訟提起されているので、憶測で述べるわけにはいかないが(まあ、村社会である競馬界で所属騎手が分から調教師が訴えられるのがかなり異常であるが)、ひとつ言えるのは、暴力をふるったのはいけないということ。報道された事実が本当であれば、パワハラどころではなく、完全な傷害事件である。

ただ、競馬界には「この程度当たり前のことであり、訴える方がおかしい」という論調の人も少なからずいる。

そのような人に言いたい。そのような考えは時代にふさわしくなく、しかも暴力で人を従わせようとするのは自分に指導力がないということを白状するものだと、認識するべきである。

競馬が危険と隣り合わせの競技なのは、わかっている。だからこそ、日常で理不尽な危険な暴力をふるうのは、むしろ逆効果でしかないと思う。危険と隣り合わせであるからこそ、普段から危険な目に合わせないようにみんなで注意し、教育すべきだ。そこに、暴力が入る余地はない。

そして、暴力による指導は、育てた気になるが、スポーツ科学的には最終的にパフォーマンスを下げると証明されている。

競馬が今後、より多くの人にスポーツとして楽しまれるようになるには、暴力によらないしっかりとした騎手の育成方法が採られなければならない。

 

ふたつ目は、笠松競馬の関係者による馬券購入と、所得隠し。

昨年8月に発覚した事件からさらに調査した結果、約20人がかかわり、約30億円超の申告漏れがあったという。

競馬では、馬の状態等から「今回は本気で走らせない」ということが少なからず行われている。特に、賞金が少ない地方競馬では、走らせないと馬主にとって損でしかないので、状態が良くなくてもとりあえず走らせるということがよくある。ただ、それは調整の一環であったり、馬主のためでもあったりするので、一概に否定すべきではない(否定するなら、トライアルレースで本番のために仕上がり途上で出すのも良くないということになってしまう)。

そのため、いわゆる「ヤリヤラズ」というものは存在するし、個人的にはそれを推理するのも競馬の楽しみのひとつだと思っている。本番は次走だから今回は軽視するなんて、通常の予想でもしているだろうから。

ただ、前提としてギャンブルとして公正が担保されていることが必要である。だから、法律で調教師や騎手は馬券を購入することが禁じられている。

今回は、法律を潜脱する意図で別の人の口座で馬券を購入したうえで、所得を隠して税の申告漏れもするという、非常に悪質なものである。

ギャンブルであるからこそ、法に違反してはいけない。なのに、競馬村で行っていることだから密告もされないだろうしバレないだろうと思って内部で馬券を購入した上に、税の申告を逃れようとするのは、ギャンブルの公正性担保を大きく害するものであり、到底許されるものではない。

競馬好きならほとんどの人が知っていることであると思うが、笠松競馬場はあの日本史上最大のアイドルホース・オグリキャップがデビューした地であり、名手安藤勝己などがデビューした地でもある。オグリキャップについては、ウマ娘という形であるが再び漫画化されて注目を集めているし、本当なら本日その冠協賛レースが行われる予定だった。それが、所得隠しによる脱税で中止になるとは、イメージダウンでしかない。

唯一の救いは、笠松競馬が告発したのがきっかけであったことだ。

名馬・名手誕生の地である笠松競馬場。その名を汚す今回の事態を自浄する心意気があるならば、まだ信じてみたい。

 

昨夜、NHKで高知競馬を特集する番組が放送された。どん底状態にあった高知競馬が、今では地方競馬の中でも南関東に次ぐくらいの売上をあげるようになった。日曜日開催なら南関東よりも売り上げるときもある。

じっくりと馬と人を育てる。それを支える環境を作る。様々なアイディアを出す。魅力を発掘する。

数多くの人の努力によって、高知競馬は立ち直った。

今や「一発逆転ファイナルレース」は競馬ファンにとって名物レースになった。土曜、日曜、JRAで負けた人が大逆転を狙ってネットで購入するなんて姿も多く見かけるようになった。

まさに一発逆転をした高知競馬のように、競馬を愛する気持ちと真摯に取り組む姿勢があれば、失われた信頼を取り返すことだってできるはずだ。そうとう厳しい道ではあるが。

厳しい道であっても、法令を遵守して地道に続けるしかない。アイディアを出して、どうすればクリーンな競馬界になるか考えないといけない。

それが競馬界にとって、最適な道であると信じて。

 

 

自分は競馬界からすると、外様な人間である。

ただ、競馬を愛している人間であり、同時に一応法律家でもある。

そして、外様の人間だからこそ改善できることもあると思う。

このような事態を改善するために、競馬界の手助けとなる活動をしていきたい。