オグリキャップをもう一度

競馬好きの行政書士が競馬について気ままに書くブログ 馬主申請の代行も行っております

今の中京競馬場の芝に合うお馬さん

通常は12月の初旬に終わってから1ヶ月くらい空けて開幕する1月の中京開催。それが、今年は京都競馬場の改修工事のため、京都開催の代わりに1月の頭から行われています。しかも、6週間開催。

そういうわけで、芝コースはだいぶ荒れてきた感じ。先々週までは荒れているといっても内前が優勢でしたが、先週は内が見た目通りに重くなって、外からの差しも届くようになってきました。

そして、開幕当初からある程度表れていた馬体や血統の傾向は、先週より顕著になったように思えます。すなわち馬体は馬体重がある馬、血統的にはRobertoのようなタフな血を持った馬。

シンザン記念の回顧ブログでも「重い馬がいい」と書きましたね。それと、モーリス産駒ということは、当然Robertoの血を持っています。

その前の金杯回顧ブログでは、Nureyevについて少々。Nureyevもタフさが要求されるときに力を発揮します。

 

では先週の重賞、愛知杯日経新春杯についておさらいをして、その傾向が顕著になったことを書いていきましょう。

愛知杯ディープインパクト×母父シンボリクリスエスのワンツーで決まりました。

ディープというと切れ味が身上のように思えますが、母父シンボリクリスエスはRoberto系。今開催の中京芝はディープ産駒でも合う、合わないがはっきりしていて、合う方ならやってきます(合わなかった典型例が日経新春杯のアドマイヤビルゴ。馬体重も軽かったですしね)。

つまり、ディープ産駒を買うにしても、馬格があって、タフな血を持っていることが重要だと。

 

日経新春杯はショウリュウイクゾが勝利しました。オルフェーヴルにあるLt.Stevensの血と母方ショウリュウムーンにあるThongの血の全きょうだいインブリードによって、Nureyevなどを活性化させる、走るオルフェーヴル産駒の典型的配合と言えます。

しかも、ショウリュウイクゾの馬体重は512キロとやはり重い。条件に合致しております。

2着だったのが穴のミスマンマミーア。直線勝負に賭けた騎乗も見事ですし、何よりこの馬はRoberto系。これまでも荒れた馬場は得意だっただけに、今開催の芝が合ったのでしょう。

3着クラージュゲリエも母の父がシンボリクリスエスと、やはりRobertoの血が入っています。

 

馬場が良くなるということは考えにくく、この傾向は続くと思います(RobertoだけでなくSadler’s Wellsもいい馬場になる可能性はあるけど、それだって≒Nureyevなのだから、もうその傾向は出ています)。

なので、これを参考にしてみてはいかがでしょうか?

法令遵守の時代に

いいこともあれば、悪いこともある。それが世の中というものか。

 

コロナ禍という状況においても、競馬界はスター誕生などに盛り上がり、売り上げも上々。若者や「UMAJO」といった女性層も増えてきており、レジャーのひとつとして定着していた。

しかし、競馬は基本的にギャンブルであり(ギャンブルであることとレジャーであることは決して相反するものではなく、両立するが)、サラブレッドという500キロ近い馬を扱う特殊な世界でもある。

そのため、特殊性ゆえの「村社会」になりがちである。

そして、日本において賭博は犯罪であり(賭博罪(刑法185条本文))、競馬法という法律によって競馬が認められていることからすると、何より法令遵守の姿勢が求められる。ギャンブルにおいて、公正であることの担保が、何より認められるうえで重要であるから。

ただ、得てして「村社会」と法令遵守は、相容れないものになってしまう。法令よりも、村社会でできた「暗黙のルール」とでもいうものが重要視されがちになってしまうので。

 

最近報道された競馬のイメージダウンにつながる記事がいくつかあった。

ひとつ目は、JRAの木村哲也厩舎の暴力事件。

詳しい事情は分からないうえに、訴訟提起されているので、憶測で述べるわけにはいかないが(まあ、村社会である競馬界で所属騎手が分から調教師が訴えられるのがかなり異常であるが)、ひとつ言えるのは、暴力をふるったのはいけないということ。報道された事実が本当であれば、パワハラどころではなく、完全な傷害事件である。

ただ、競馬界には「この程度当たり前のことであり、訴える方がおかしい」という論調の人も少なからずいる。

そのような人に言いたい。そのような考えは時代にふさわしくなく、しかも暴力で人を従わせようとするのは自分に指導力がないということを白状するものだと、認識するべきである。

競馬が危険と隣り合わせの競技なのは、わかっている。だからこそ、日常で理不尽な危険な暴力をふるうのは、むしろ逆効果でしかないと思う。危険と隣り合わせであるからこそ、普段から危険な目に合わせないようにみんなで注意し、教育すべきだ。そこに、暴力が入る余地はない。

そして、暴力による指導は、育てた気になるが、スポーツ科学的には最終的にパフォーマンスを下げると証明されている。

競馬が今後、より多くの人にスポーツとして楽しまれるようになるには、暴力によらないしっかりとした騎手の育成方法が採られなければならない。

 

ふたつ目は、笠松競馬の関係者による馬券購入と、所得隠し。

昨年8月に発覚した事件からさらに調査した結果、約20人がかかわり、約30億円超の申告漏れがあったという。

競馬では、馬の状態等から「今回は本気で走らせない」ということが少なからず行われている。特に、賞金が少ない地方競馬では、走らせないと馬主にとって損でしかないので、状態が良くなくてもとりあえず走らせるということがよくある。ただ、それは調整の一環であったり、馬主のためでもあったりするので、一概に否定すべきではない(否定するなら、トライアルレースで本番のために仕上がり途上で出すのも良くないということになってしまう)。

そのため、いわゆる「ヤリヤラズ」というものは存在するし、個人的にはそれを推理するのも競馬の楽しみのひとつだと思っている。本番は次走だから今回は軽視するなんて、通常の予想でもしているだろうから。

ただ、前提としてギャンブルとして公正が担保されていることが必要である。だから、法律で調教師や騎手は馬券を購入することが禁じられている。

今回は、法律を潜脱する意図で別の人の口座で馬券を購入したうえで、所得を隠して税の申告漏れもするという、非常に悪質なものである。

ギャンブルであるからこそ、法に違反してはいけない。なのに、競馬村で行っていることだから密告もされないだろうしバレないだろうと思って内部で馬券を購入した上に、税の申告を逃れようとするのは、ギャンブルの公正性担保を大きく害するものであり、到底許されるものではない。

競馬好きならほとんどの人が知っていることであると思うが、笠松競馬場はあの日本史上最大のアイドルホース・オグリキャップがデビューした地であり、名手安藤勝己などがデビューした地でもある。オグリキャップについては、ウマ娘という形であるが再び漫画化されて注目を集めているし、本当なら本日その冠協賛レースが行われる予定だった。それが、所得隠しによる脱税で中止になるとは、イメージダウンでしかない。

唯一の救いは、笠松競馬が告発したのがきっかけであったことだ。

名馬・名手誕生の地である笠松競馬場。その名を汚す今回の事態を自浄する心意気があるならば、まだ信じてみたい。

 

昨夜、NHKで高知競馬を特集する番組が放送された。どん底状態にあった高知競馬が、今では地方競馬の中でも南関東に次ぐくらいの売上をあげるようになった。日曜日開催なら南関東よりも売り上げるときもある。

じっくりと馬と人を育てる。それを支える環境を作る。様々なアイディアを出す。魅力を発掘する。

数多くの人の努力によって、高知競馬は立ち直った。

今や「一発逆転ファイナルレース」は競馬ファンにとって名物レースになった。土曜、日曜、JRAで負けた人が大逆転を狙ってネットで購入するなんて姿も多く見かけるようになった。

まさに一発逆転をした高知競馬のように、競馬を愛する気持ちと真摯に取り組む姿勢があれば、失われた信頼を取り返すことだってできるはずだ。そうとう厳しい道ではあるが。

厳しい道であっても、法令を遵守して地道に続けるしかない。アイディアを出して、どうすればクリーンな競馬界になるか考えないといけない。

それが競馬界にとって、最適な道であると信じて。

 

 

自分は競馬界からすると、外様な人間である。

ただ、競馬を愛している人間であり、同時に一応法律家でもある。

そして、外様の人間だからこそ改善できることもあると思う。

このような事態を改善するために、競馬界の手助けとなる活動をしていきたい。

モーリス産駒のワンツーから考える血統論

シンザン記念はモーリス産駒がワンツーフィニッシュを決めました。

2歳戦が始まった直後は「緩い」だの「キレがない」だの「遅い」だの言われて勝ち味の遅かったモーリス産駒ですが、気がついたら36勝(うちJRA32勝)をあげており、かなりの好成績。しかも、ワンツーフィニッシュで重賞制覇となると、さらに評価が高まりそうです。

 

さて、そんなモーリス産駒のワンツーから考える血統論、というのが今回のタイトルなわけですが、血統論と聞くと、どのようなことを思い浮かべますか。「3×4のインブリード」とか「ニアリークロス」とか「4分の1異系」とかいろいろあるかもしれません。当ブログでもニアリークロスとか牝馬インブリードとかいろいろといってきました。

ただ、血統論は、実際考えると後付けの結果論である場合がほとんどです。同じ配合だからって、同じくらいの強さをもった馬が生まれるわけではないですし。科学的根拠も薄いです。

だからといって、まったく無意味かというと、そうでもないと思うのです。これまでの経験による知見であったり、オカルトっぽいですが血統に対する人々の「想い」によるエネルギーであるとか、今のところ科学的に証明されていないからといって、すべてを否定するのもまたおかしいと思うのです。

それに、血統論って言われたら納得してしまうじゃないですか。よく競馬を知っているようにも思われますし。

そもそも競馬が「ブラッドスポーツ」である以上、血統論を避けてはいけないものだと思います。

とはいえ、科学的根拠を示しているものが多くないというのも事実。

なので、一方では信じ、他方で疑うという態度が必要なのではないでしょうか。

 

さて、今回の本題。今回のシンザン記念でモーリス産駒がワンツーであったことから思った血統について、お話します。

勝ったのは、ピクシーナイトという馬でした。この馬は、サンデーサイレンスインブリードを持っていません。

モーリスは父母父がサンデーサイレンスであり、日本で飽和状態にあるサンデーサイレンスの血を持った牝馬と3×4のインブリードができやすいことから、ほとんどの産駒にサンデーサイレンスインブリードが成立しています。今年の3歳世代でいうと、176頭中129頭、すなわち7割以上の馬にサンデーサイレンスインブリードが成立しています。重賞レースでの勝利の大半を占めているノーザンファーム産のモーリス産駒でいうと、43頭中38頭がサンデーサイレンスインブリード持ち。9割近くという驚異的な数字です。

ピクシーナイトはそんなノーザンファームの少数派である5頭のうちの一頭。しかも、そのうち三頭は母が外国から来た馬であるため、母日本産限定ならわずか2頭となるのです。

そのうちの1頭がモーリス産駒で初めて重賞を勝った。

つまり、モーリス産駒はサンデーサイレンスインブリードがなくてもいい、ということです。

サンデーサイレンスインブリード自体を否定するつもりはありません。

今度もモーリス産駒で活躍する馬は多く出るでしょうし、その中にはサンデーサイレンスインブリードを持っている馬はかなりいるでしょう。ただ、それはサンデーサイレンスインブリードのみによるものではないということです。これだけ多くいるのなら、モーリス産駒の活躍馬にサンデーサイレンスインブリードがあるのがある意味当たり前なのですから。

なので、今後は「やはりサンデーサイレンスインブリードは有効だった」という声があっても、少し立ち止まって本当にそうなのかと考える姿勢が重要になるのだと思います。そこで思考できるかどうかで、今後サンデーサイレンスの時代ではなくなったときに対応できるかどうか変わってくると思いますので。

 

2着はルークズネストでした。

こちらは母の父がディープインパクト。当たり前ですけど、サンデーサイレンスインブリードがあります。

ただ、ここで書きたいのはそのことではありません。母の父ディープインパクトについてです。

最近母の父ディープインパクトの馬が重賞戦線をにぎわせています。ブラヴァス、アリストテレス、ムジカ、ステラヴェローチェなど。このシンザン記念にも、ルークズネスト以外に一番人気だったククナに、セラフィナイト、マリアエレーナと4頭出走させていました。

母の父ディープインパクトの馬が勝っていたら、そのことについて深堀してみる、或いは母の父ディープインパクト時代が近づいているということを書こうかと思っていました。

でも、結果は2着。

改めて成績を見て、気がついたのです。母の父ディープインパクト産駒が重賞戦線をにぎわせてはいるけど、実はあと一歩で勝ちを逃している方が多いということに。

ここからは推測です。代を経ると、やはりディープインパクトの瞬発力はそがれるのではないでしょうか。

理由として考えられるのは、基本的にディープインパクトの相手にはパワーがある馬をつけるからです。そうでないと、非力な馬が多くなってしまうので。

そうすると、代を経たら、当然ディープのキレ味要素はそがれます。なのに、ディープの血=切れ味、ちょっと非力という印象があるため、パワーもあるようなキングマンボ系の種牡馬などが多くつけられる。

結果的に、いい種牡馬をつけているからスピード能力はあるけど、想像していたのとちょっと違う、というのが誕生してしまうのだと思います。

ディープインパクトを父に持つ優秀な繁殖牝馬は、少なからずいます。なので、今後も母の父ディープインパクトで活躍する馬も出てくるでしょう。

ただ、それが本当に母の父ディープインパクトだから走るのか、少し考えてみたいものです(もちろん、母の父ディープインパクトだから走るという側面もあると思います)。

 

以上のことも、結果論といえば結果論です。別の結果が出たら、やはりその理由を考えますし、持論を撤回することもあるでしょう。

そして、同じ結果であっても、違う見方ができるのも、競馬の面白さのひとつです。

結局何が正しいかわからず、先輩方がトライ&エラーを重ねながら血を紡いできたのが、競馬です。

だからこそ、様々な見方を、様々な血統を、とも思うのです。

 

最後に、数字から見る今のJRAの馬場傾向を少し。

シンザン記念、この2頭はともに馬体重が500キロ以上の馬でした。その他の中京競馬場で行われたレースも、馬体重が重い馬が好走しております。今の馬場は、それだけパワーがいることの証明だと思います。

なので、今週の中京競馬場の芝のレースは、馬体重が重い馬から狙ってみるのもいいのではないでしょうか。

母父ハーツクライの可能性

リステッド競走であるジュニアカップを勝ったヴェイルネビュラ、京都金杯を勝ったケイデンスコールと、1月5日は主要なレースで父ロードカナロア×母父ハーツクライの馬が2頭勝ちました。この組み合わせは元日に川崎競馬で下級条件とはいえイチリュウマンバイも勝っており、今年早くも3勝したことになります。

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新春の川崎競馬は誘導場が獅子舞に扮して誘導することもあります。

母父ハーツクライJRAの重賞を勝ったことがあるのは、トロワゼトラル、ケイデンスコール、ヴァルディゼールの3頭。いずれも父がロードカナロアです。

母父ハーツクライで獲得賞金ベスト20を見てみますと、さきほどの3頭を含め、父ロードカナロアは7頭ランクイン。

この配合は完全にニックスといっていいでしょう。

 

なぜ父ロードカナロア×母父ハーツクライがいいのでしょうか。

ひとつはNureyevにあると思います。

そもそもハーツクライとNureyevは相性のいい血。シュヴァルグランヌーヴォレコルトなどがいます。相性がいい理由として、いわゆる「ナスペリオン(ナスルーラハイペリオン)」の伸びやかなスピードを増幅させるから、と言われています。

ロードカナロアキングカメハメハの仔なので当然Nureyevの血を持っています。

それがトロワゼトワルのスピードやケイデンスコールの差し脚などに結びついているのだと思われます。

ただ、Nureyevの血を持つ馬なら、ロードカナロア以外にもいます。なので、他にも理由があるはず。

その理由として、もうひとつ、Busandaの血があると考えられます。

Busanda。名牝La Troiennneの孫であり、BuckpasserやBupersの母として有名な馬です。ロードカナロア産駒の最高傑作アーモンドアイも母フサイチパンドラがBusandaの血を持っていました。また、ロードカナロア自身もBusandaの血を持っています。

Busandaがスピードだけでなくパワーも伝える血であるであることを考えると、ハーツクライロードカナロアだとどうしても緩くなりがちになるところを、インブリードによって硬くなりすぎずに締める役割を果たしていると思います。

結果的に、しなやかで伸びる仔ができやすくなる、ということでしょう。

 

ロードカナロア以外では今一つ好成績をあげられていない母父ハーツクライの馬たち。ただ、最近面白い傾向も出ています。それは、意外とダートで走る馬も出すこと。

例えば、大井で準重賞のジェムストーン賞を勝ったギシギシや佐賀の佐賀若駒賞を勝ったムーンオブザボスなど。ギシギシはBusanda増幅、ムーンオブザボスはNureyev持ちのパターンです。

ハーツクライ自身は緩くダートでは非力な面もありますが、自身の牝系My Bupersからはノンコノユメも輩出するなど、ダートも走れる下地があります。

なら、緩さを解消させる意味でも、上手に配合すればダート系の種牡馬も合うのではないでしょうか。

 

同期のキングカメハメハBMSで首位となり、同期のハーツクライBMS部門では置かれている状況でした。

ただ、大分駒もそろってきた感じがしますし、ハーツ産駒のいい牝馬も繁殖にあがっています。

将来的にはロードカナロアとのニックス以外にも活躍馬を出すのではないでしょうか。

謹賀新年

あけましておめでとうございます

旧年中は大変お世話になりました

本年もよろしくお願いいたします

 

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昨年の競馬界は、偉大な記録が次々と達成されました。

JRAでは牡馬、牝馬ともに、無敗の三冠馬が誕生。三冠馬が3頭激突するジャパンカップもありました。

他にも世界で初めての白毛馬によるG1制覇など様々なことがありました。

コロナ禍で開催すら危ぶまれた競馬界。昨年たくさんあった名場面は、努力して開催し続けた関係者とファンに対するご褒美だったと思います。

 

今年も、未だに新型コロナウイルスの感染は拡大し続けており、大変な状況に変わりはありません。競馬場での観戦も限定的なものとなっております。

そんな時代だからこそ、感染拡大防止のためにできることはしっかりと行い、同時に勇気づけられた競馬に対してお家で応援する。そういうことが大事なのだと思います。

自分自身も、馬主申請からその後のサポートなど馬主の手助けをする行政書士として、競馬界に少しでも貢献出来たら、と思います。

そして、競馬の魅力を伝えられたら、と思います。

 

今年一年、いい競馬が見られますように。

 

太陽がいっぱいになるほどのスピードを ~アランバローズ~

とにかく速い。

全日本2歳優駿で5馬身もの差をつけて鮮やかに逃げ切り勝ちをしたアランバローズを見て、そう思いました。

無傷の5連勝。ほとんどがスピードにものをいわせての圧勝劇です。

なぜそんなに速いのか。

ダート短距離という観点からいえば、もちろん父ヘニーヒューズの存在もあるでしょうが、カギを握るのは母方にあるような気もします。

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アランバローズの5代血統表(出典:netkeiba)

母方にManipulatorという種牡馬がいると思います。父は言わずと知れたUnbridled。母Inside InformationはBCディスタフやエイコーンSなど14勝をあげたアメリカの名牝です。

Manipulatorの血が入っている馬は日本では非常に少ないですが、UnbridledとInside Informationの仔と考えれば、日本でも大爆発をする可能性を持った血ともいえます。

そのManipulatorの仔であるセンブラフェ。実はこの馬は、アルゼンチンの名物レースブエノスアイレス市大賞というダート直線1000mのレースを勝っている馬なのです。

アルゼンチンは高速馬場のスピード競馬であり、日本でこそそのスピードは活きるということで、近年社台グループを筆頭にアルゼンチンの血統を持ちこむのが多くなっています。センブラフェもその一環としてノーザンファームが購入した馬でした。

ただ、産駒は身体が弱く、センブラフェ自身も2頭の馬しか残せず亡くなってしまいました。

爆発する下地はありながら、健康面等で上手に扱えなかったセンブラフェの一族。

そこに、5代血統表でいえばアウトブリードになるヘニーヒューズをつけて、健康面の不安を除きながら爆発したのがアランバローズということになります。

センブラフェという馬を考えれば、今後も成長しそうな気もするアランバローズ。

冬の寒くなった川崎を明るく照らしたスピードは、まさに「アラン」・ドロンの代表作「太陽がいっぱい」といわんばかりのものでした。

今後の活躍にも期待したいです。

今更だけどJBCについて

この秋は、コロナ禍においても頑張って続けている競馬界へのご褒美なのでしょうか、次々と記録的なことが起こっています。

そういうわけで、11月はブログネタにしたいことがたくさんあったのですが、筆不精で気がついたら12月となってしまいました。12月にもなって先月のことを振り返るのも季節外れな感もしますが、備忘録も兼ねてwebという広大な情報の海に流していこうと思います。

今回は、JBCについてです。

 

1日にG1レースをいくつも行う先駆けとなったアメリカのブリーダーズカップは、そのレースの多様性から、現代競馬の血統トレンドを知るのに役立っているという一面もあります。

では日本のJBCはどうなのか。日本の生産者のため、と考えれば、少なくとも日本の生産者に寄与するだけのものがあると思うのです。上位に来た馬の血統は、生産者にとって配合のヒントになるかもしれませんし。

そういうわけで、今回はJBCで勝った馬の血統について書いていこうと思います。といっても、JBCクラシックを勝ったクリソベリルについては以前書きましたし

keiba-gyoseisyoshi.hatenablog.com

今回は他の3頭について述べようと思います。

 

まずは、JBCレディスクラシックを勝ったファッショニスタについて。

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ファッショニスタの5代血統表(出典:netkeiba)

近親にHenrythenavigatorやリッスン等欧州で実績のある馬がいる血統。日本でもそれなりに活躍している馬を出している牝系ですが、ちょっともっさりしているのが多いイメージです。

ただ、母父がコロナズドクエストでよりパワー型にしたうえで、ストリートセンスをつけてミスプロのクロスですから、日本のダートを走り切れるタフさはあるのでしょうね。

そういう意味では、Rivermanというのもタフさを上乗せする血ですので、いいのかもしれません。クリソベリルの母方にも入っていますし。

マドラスチェックとの叩き合いを制したタフさは、血統面からも説明できるんでしょうね。

 

レース順でいいますと、お次はJBCスプリント。サブノジュニアの出番です。

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サブノジュニアの5代血統表(出典:netkeiba)

サブノイナズマの仔はよく走る。JBCクラシックではサブノクロヒョウも走っていますし、南関東ではおなじみの繁殖牝馬となっています。

どうして走るのだろうと思って血統表を見たら、Sex Appealの文字。そりゃ走るわけです。

Sex Appealトライマイベストエルグランセニョールを輩出した名牝。あのアーモンドアイもこの牝系ですし、ダート界ですとインペリシャブルもSex Appeal牝系です。世界的にも、Sex appealの母Best in Showの系譜ですけど、Siskinも出てきていますし、今なお活力のある牝系、いや、世界で一番活力のある牝系といっても過言ではありません。

この牝系の特徴は、パワーを含めてある程度カシっとしたスピードを伝えること。アーモンドアイは緩さと硬さが最適なバランスでブレンドされた感じを受けますが、その硬さとスピードは牝系から受け継がれているといってもいいでしょう。

そこに日本ダート界では安定のサウスヴィグラスをつけるのですから、これだけ活躍するわけです。

レースを覚えさせるためにわざと内に入れたり、的場クリニックで我慢させたり、敢えてマイルを使ったり…。陣営のこれまで行ってきた努力が実を結んだ勝利。南関東競馬好きの私としては、嬉しい勝利でした。

 

最後は、新設されたJBC2歳優駿を制したラッキードリームについて。

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ラッキードリームの5代血統表(出典:netkeiba)

南関東競馬好きであるならば、やはり道営競馬も見ないと。ということで、3月からは門別競馬の能検もじっくり見るということをここ数年しております。

そんな中、シニスターミニスター産駒でいい動きをしているのが何頭かいるな。そう思ったうちの一頭が、ラッキードリームでした。

馬主を見たら、林正夫先生。これは見所あるということだな、と思って血統を見たら、母がサクラスリールでした。

ということは、カプリフレイバーの弟ということか。これは注目しておかないと、と思って追いかけ続けていたら、この勝利。自分の馬を見る目が合っていた、という自信にもなる嬉しい勝利でした。

改めて血統面について話してみます。母サクラスリールは次世代の南関東スプリント王候補カプリフレイバーも生んでいるように、優秀な繁殖牝馬です。その源は何かと問われたら、やはりスワンズウッドグローヴ牝系(Friar's Daughter牝系の方が通りがいい?)であることに尽きるでしょう。

スワンズウッドグローヴ。一時代を築いたサクラの基礎牝馬です。サクラチヨノオーサクラホクトオーサクラセカイオーサクラエイコウオーなどなど、数多くの名馬を輩出しました。

同時に、この牝系からは、イエローパワー、レジェンドハンターのように、ダートでスピードを持った馬も出しているのです。

そのスピード面が、サクラスリールの繁殖牝馬としての良さにつながっているのだと思います。

サクラの馬は少なくなってしまいましたが、それでも時々こういった形でサクラの血が出てくるのは、ブラッドスポーツである競馬の良さを再認識しますね。

 

改めてJBC勝ち馬の血統を見ていると、新たな発見もあり、楽しいものでした。

血統理論は正直結果論、後付けであるところはあります。同じ配合をしても、同じ強さの馬ができるわけではありません。

ただ、血統はこれまでの競馬関係者が積み重ねた結晶ともいえます。その結晶には何らかのヒントがある。JBCは生産者のためのレースでもありますし、勝ち馬の血統を探ることは、生産者のより良い馬の生産につながるのではないか、とも思います。

 

今回はこんなところで。